逢いたくて… 2
撮影が始まると一変してあのチャラ男感が嘘のように、真剣に取り組んでいる岩ちゃん。
それをボーっと見つめながらやっぱりかっこいいな〜なんてしみじみ思っていた。
結局のところ、みんなそれぞれEXILEってグループとしての誇りなり、責任感を持っていて。
仕事に対してその気持ちを前面に出しているんだと。
プライベートではチャラついていても、仕事は別物ってわけだ。
「これ、みんな買っちゃいますね…」
先輩と二人でそんな話をしていたら、突然岩ちゃんから声が上がって。
思わず吃驚してそっちに視線を向ける。
「何事ですかね?」
「…モデルが来てない?とか言ってるみたいだけど…」
途端に慌てふためくスタッフ達。
あくまで雑用係の私はどうすることもできずにただここに立っているだけで。
でも次の瞬間思いっきり岩ちゃんの強い視線が飛んできたんだ。
それからゆっくりとこっちに向かって歩いてきて…――――――――「…え」戸惑う私の前で止まると、ギュっと私の手首を掴んだんだ。
「この子がいいです、ボク」
「…え?あの…」
「この子にしてください!じつはボク達お友達で…。だからこの子と撮って貰えませんか?」
確かに私の手首を掴んでいる岩ちゃん。
この状況すら全く読めない私はキョトンとするしかなくって。
事務所を怒らせたらいけないって判断したのか、急いで私をフルメイクにとりかかる…そんな話に進んでしまっている。
「やややや、私できません!絶対無理です!ド素人なのに…さすがにマズイですよ!」
どんなに言った所で、本人のOKが出ているのだから…
そう言われてスッタフは、私にメイクをのせていく。
「ゆきみちゃん覚悟決めて!直人さんならきっとやると思わない?助けてよ、ボクのこと…」
岩ちゃんに言われて心が複雑に揺れた。
確かに直人だったなら、こういうピンチの時に助けを求められたのならばやるんじゃないかって。
絶対にいいものを作る!ってそういう気持ちで「やらせていただきます!」って即答するんじゃないかって。
――――――そう思う。
でも私は一般人で。
荷が重いと言っちゃえばそれだけのことで。
仕事だからって割り切ってできることと、できないこともあると思うけど、断ることもできなかった。