あの日の真実


――――――――――
―――――
―――



「わりと前から分かってたけど……」


一生分の勇気を使い果たした気分で言ったこの気持ち。

それに対して直人の口から出てきたのはこんなにもあっさりとした簡単な言葉だった。

思わず膝をついてガクンと崩れそうになるけど。


「そういう意味じゃなくて、直人さんのこと、男として好きって意味だよ?」

「うん」


キョトンと私を見つめる直人。

別になんてことないって顔で。


「恋愛感情大ありだよ……」

「うん、だな」

「いいの?私、どんどん直人さんのこと好きになっちゃうばかりだよ」


私が小さくそう言うと直人は、ふわっと私の前髪に手を触れた。


「ダメって言ったら止められるの?」


逆にそんな質問をされて。

直人はやっぱり意地悪だと思った。

私の答えを誰よりわかっててそう聞くんだから。


「止め……られるわけない……」


悔し紛れに小さくぼやくと、直人の手が私の頭にポンポンって触れた。

俯いていた顔をあげると真っ直ぐに私を見ている直人と目が合って。


「ずっと好きで居てよ……」


そんな言葉をくれるんだ。

それがどういう意味なのかも分からないから……


「いい意味に勝手にとるよ?」


私が聞くと、得意のどや顔で「いいよ」上から言われた。

だから欲張りになった私は直人の腕をギュッと掴んで聞いたんだ。


「直人さんの気持ちが知りたい……」

「はは、分かってて言わせるんだ?」


直人が笑顔でそう言うもんだから、これから直人が言う言葉を想像してまた心拍数があがったんだ。


「……ま、本当はもっとゆっくりな予定だったんだけど、岩ちゃんに取られるのは御免だったし、拓は拓で、”早くしねーと誰かに取られる”とか言うし……さすがのオレも焦ったな」


ベラベラと話始めた直人をキョトンと見ている私。

思い当たる節はそれぞれあるけど……

聞きたいのはそういうことじゃなくて。


「直人の言葉意外は信じない!!……そう言われた時に、ああオレこの子のこと好きだ!って思ったんだ。だから、あの日一緒に眠った時、マジですげぇ葛藤だった。我慢した自分を褒めてやりてぇぐらい……」


そう言ってニコッと微笑む直人。

あの日のドキドキが蘇ってきて、私の心臓壊れちゃいそうなくらい脈うっているなんて。

何も言えずにいる私に向かって直人が小さく囁いた。


「今夜は我慢しないから」


トクンっと私の胸が締め付けられた――――





―――
―――――
――――――――――

- 30 -

prev / next

[TOP]