飲み会 10
カチカチカチカチ…――――
聞こえるのは時計の秒針が動く音と、それから加湿機がボーって鳴っている音。
それと誰だか分からないゴーってイビキと…耳の後ろにかかる直人の寝息…。
でもたぶん一番大きいのは、トクントクンいってる私の胸の鼓動。
…全然眠れない。
どうやっても眠れない…すっごく眠いのに、身体は疲れ果てているのに、神経だけが逆なでしたかのよう。
起きようにも直人の腕がガッチリと私のお腹辺りに回されていて、挙句の果てには後ろから足まで絡みつけられている。
「眠れるわけないじゃん…」
一人小さく呟いたらお腹にあった直人の腕がふわっと動いて私の髪をそっと撫でたんだ。
…――――え?
直人?
起きてるの?
思わずくるりと向きを変えようと身体を少しすらしたら、すぐにぐっと肩を押さえつけられて…
そのまま強くバックハグされる。
もう最高長心拍数全開で。
でも顔が見えない分、ほんの少し楽な気持ちになった。
何も言わない直人は、私の髪を何度か撫でてまたお腹の定位置に戻した。
何か言葉を口にするのなら、きっと今の私には「好き」って言葉以外なくて。
でも今言ってもどうにもならないんだって。
直人はきっと眠ったフリをして聞かなかったことにするって…分かる。
だけど、溢れるこの想いをどうにか伝えたくて…――――
苦し紛れに、直人の手をギュっと握ったんだ。
すぐ後ろでゴクって生唾を飲み込む音がして…
それからそっと…私の握った手に指を絡めてくれた直人。
そのまままた少しだけ強く胸を寄せてきて…
「おやすみ…」
本当に囁くみたいに、私にだけしか聞こえないであろう声でそう言った。
お酒に酔っていたからだっていい。
直人の記憶になくったって構わない。
私が今この一時を一生忘れずに覚えているから…――――
眩い光の中、私は直人の温もりを全身で感じながらしばし甘い眠りについたんだった。