飲み会 8
「今度オレの着る?ゆきみちゃんに似合いそうなの結構あるよ」
「え?いんですか?」
「うん。特別に着せてあげちゃう!」
ニカッて口を大きく開けて笑う直人。
密かに胸がキュンと締め付けられた。
自分ではこれ以上好きになっちゃいけない!……そう思っているのに、私の本能はそれができそうもなくて。
「直人さん」
「ん〜?」
「飲みましょう!」
私が言うとチャーミングな八重歯を見せて可愛く笑った。
そうしてリビングに戻ると、岩ちゃんがしょぼくれた顔をしていて。
それがちょっとだけ可愛く見えた。
ストンッと直人と今市くんの間に座った私は正面にいる岩ちゃんに笑顔を向けた。
「ゆきみちゃん、ごめんね……悪酔いしすぎて俺……」
「気にしてない!だから岩ちゃんも気にしない!」
私がそう言うと、ちょっとだけホッとしたような岩ちゃん。
「あでも……。岩ちゃんだけじゃないけど、本当にそういう女関係の噂ってファンは悲しいから。ただ一緒にいるだけでも恋人って思っちゃったりするから、そこだけはやっぱり気をつけてほしいな……1ファンの意見として!」
本当に熱愛記事なんて御法度で。
急上昇中にそんなの出てしまったもんなら、芸能人の人気なんて一気に下がってしまう可能性だってあるわけで。
「直人さんに熱愛記事がでたらゆきみちゃんどーする?」
岩ちゃんの言葉にズキンと胸が痛む。
そんなの絶対嫌だ!
なんて口が裂けても言えないけれど。
「お前なぁ!オレがそんなヘマをすると思ってんの?」
眉毛を下げて直人が岩ちゃんを見た。
「そうじゃないっすけど……」
そう言ってチラッと岩ちゃんが私を見るから……
「……私は直人の口から出た言葉以外は信じないよ」
「え……あ、そう?マジで?」
「はいっ!」
ほんの一瞬目を大きく見開いた直人は、すぐに照れたようにふにゃっと笑ったんだ。
「直人さんの言葉以外は、信じません」
私ってばいいファンだよなぁ!
なんて自画自賛していたら、たっくんが思いっきり爆笑してて。
それにつられてみんなも笑ったんだ。
何がそんなに可笑しいのかさっぱり分からなくて。
でもさっきまであった変な空気が一変して楽しい空気に変わっていたから、私たちはそのまま飲み会を続けたんだ。