飲み会 6
「直人さんすっげぇ人懐っこいけど、寄ってくる女の人に対して必ず一線引いてるんだよ。最初から勘違いさせない為に…だろうけど。それがゆきみさんにはないな…って話。オレ達ぐらい一緒にいると、そういうの分かるようになってくるから…」
登坂くんの真剣な言葉に胸が揺れる。
同時にさっきの直人の言葉を思い出して。
「…聞かなかった方がよかった?」
直己がちょっと探るように私に聞いて。
「分かりません。それを聞いたからって自惚れるつもりは勿論ないですし…直人さんは勿論ですけど…住む世界が違う人だと思ってます。憧れだけで十分です…」
「本気になる前に止めるってこと?」
登坂くんが意地悪な質問を飛ばして。
私は首を左右に振るだけ。
「本気になってるか、もう…」
今市くんの言葉に私は静かに目を逸らした。
密かに芽生えたこの想いを果たして恋と呼んでいいのだろうか。
好きでいることすら許されない…そんな気がしてしまうんだ。
「直人さんなんて止めてオレにしなよ?今オレフリーだからゆきみちゃんなら付き合っちゃうよ?」
岩ちゃんが私の膝の上に乗ったまま腕を伸ばして私の後頭部をグインっと引き寄せた。
「えっ!?」
そう思った瞬間、「バカお前!!」聞こえた声は今市くんのもので、ギリギリ岩ちゃんとの接触が免れた。
だけど私の心臓はバックバクで、勿論岩ちゃんが嫌なんてことは一切ない。
でもやっぱり…涙が出そうなくらい変な気分だった。
「ごめん、大丈夫ですか?」
今市くんの言葉にコクリと頷いた瞬間、キイ〜っとドアが開いて直人がこの部屋に戻ってきた。
涼しげな顔でこっちを見ていて。
「オレ一服〜」
そう言ってベランダに消えて行った。
煙草なんて吸わないよね?
そう思ったけど、岩ちゃんとのことでドキドキして立てなくて。
直人が見ていなきゃいいって思った。
「岩ちゃん、直人さんが呼んでる」
言ったのはエリーちゃんで。
呼ばれたのが岩ちゃんだから、やっぱり直人は全部聞いてたのかもしれないし、見ていたんだって思った。