想い


――――――――――
――――――
―――



「………」


うんともすんとも言ってくれない直人。

でも私がその胸元に顔を埋めると、そっと髪に手を乗せた。

もう自分で何やってんの!?って心の中では激しく突っ込みを入れているけど、実際の私は大人しくただただ直人にギュっと抱きついているだけ。


「…ゆきみちゃん?」


ようやくしびれを切らしたように直人が私を呼んだけど、顔なんて当たり前にあげらるわけがなくて。


「直人さんこのままでいちゃダメ?」


一生分の勇気を使い果たしたような気分でそう言ったのに…


「それはダメだよ」


あっさりと拒否られたんだ。

もう、穴に入りたい思いで顔を上げて直人を見ると、しっかりと全く動揺すら見せることのない直人がそこにいて。


「…すすすすみませんでした」


そう言って私はしぶしぶ直人から離れた。

でも直人の顔は嫌がっていた風でもなくて。

だから――――「迷惑だよね?」小さく聞いたんだ。


「いや…」


なんとも曖昧な答えを放つ直人は、ふう〜っと小さく息を吐き出してちょっとだけ窮屈だったのか、体制を整えるみたいにお尻の位置を横にずらした。

ああ、私なんてことしちゃったんだろう…。

俯いてしまいたいけど、直人と絡まった視線が外せなくて…


「この状況でずっといられたらオレも我慢も何もなくなるっしょ…」


そう言ってニカって笑った。


「…そういう優しさは結構傷つくよ、直人さん…。私、本当は言っちゃいけないのかもしれないけど…」


そこまで言うと、私は一度視線を直人から外した。

ここまできたらもう言うしかないって、覚悟を決めて、もう一度真っ直ぐに直人を見つめた。


「私直人さんのこと、大好きなんです」


私の言葉に直人の口端が緩んだ気がした。



―――
―――――
――――――――――


- 19 -

prev / next

[TOP]