初LIVE 5


「とりあえず打ち上げ行かなきゃだから」


話し込んでいたらスタッフさんが入ってきて直人にそう告げた。

完全に場違いな私とたっくん。


「あ、じゃあ私達はそろそろ行きますね」


たっくんの腕を引っ張ってそう言うと、トコトコと岩ちゃんが歩いてきてニッコリ私に向かって微笑んだんだ。


「LINE教えてよ?」


膝に手をついて、ちょっと体を屈めているから、私と視線が目の前で絡んで。

ニコニコ笑っているけど、この子完全に肉食だな!って思えた。


「私LINEやってないの」


近寄ってくる直人にもみんなにも聞こえる声でそう言ったら岩ちゃんは口を尖らせてこう言った。


「絶対NAOTOさんに何か吹き込まれてる、ゆきみちゃん!」


振り返って直人をジーッと見るけど、見られた直人は全く聞こえてないって感じに岩ちゃんを見てはいなくて。


「もしもの時は、たっくんに連絡してくれたら…」

「ちぇー。ガード硬いなぁ」


岩ちゃんの言葉にみんなが笑った。

この場が楽しくて、だから思ってしまう。


――――帰りたくない、と。


チラっと直人を見ると、直人もこっちを見ていたようで目があった。

でも私を通り越してたっくんの所に行くとなにやら耳元でコソコソ内緒話。

たっくんは「いいっすね、わかりました!」そう言って私を振り返ったんだ。


「一ノ瀬さん、行きましょうか?」


あっさりとそう言われて。

やだな私。

ワガママになってるな。

ここで帰りたくないなんて言うつもりはないけど、心の中ではそう思っている。

芸能人相手に一般人の私の意見なんて通じる訳もないし、迷惑がかかるだけなのにね。

その辺の制御もできなくなったらおしまいだよね。

分かってはいても、ついつい目は直人ばかりを追ってしまう。


「直人さん、お体無理しないでくださいね?今日は本当にみなさんかっこよかったです!」


ペコッと頭を下げる私に直人がちょっとだけ得意気に笑った。

すっと耳の後ろに手をかけて、ゆっくりと近づいてきた直人。

その動きがスローモーションに見えて、直人がその口を開くのが分かった。


「後で拓ん家で飲みなおそう!ゆきみちゃんもまっててよ、オレのこと」

「…え、本当ですか?」

「うん」

「あ、はい。喜んで…」

「寝かせねぇから」


そう囁いて私から離れて行った直人。

心臓バクバクで、顔が熱くて。

やっぱり認めざるを得ない。


―――――NAOTOがすき。



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