初LIVE 1
原宿駅の前につくと、青いバッグを持っている人が沢山いて。
土曜の夕方だからっていうのもあるのか、人で溢れかえっていた。
「一ノ瀬さん!」
ポンって肩を叩かれて振り返るとたっくんが笑顔で迎えてくれた。
「久しぶり…誘ってくれてありがとう」
ペコっと頭を下げると、たっくんがニマっと笑った。
「一ノ瀬さん、相当気に入られてますよ、あの人達に!やっぱり人気だからオレが繋がってるって分かると、一緒に飲みに連れてってって言う子も今までいっぱいいたんですよ。あの人等もフランクだから適当にOK出しちゃって連れてったこともあるんですけど…こんなにいい反応は初めてで。だから気にいっちゃったんだな〜って」
たっくんの話をどこか遠くで聞いているようで。
浮かれちゃいけない!ってあえて流して聞くことにした。
「私単に喋りやすいだけだよ!みんな優しいからたっくんの悪事をフォローしてくれてるんじゃないの?」
「…それキツイっすね〜」
「あはは!もう忘れたから気にしてないよ、ごめんね引っ張りだして」
「いや、オレのせいっすもん」
「はいはい、いいから、行こう!」
私がうながすと、たっくんはコクっと頷いて歩道橋の方へと歩き出した。
「楽屋来てもいいって言われたんで終わったら一緒に行きましょうかね?」
たっくんのその言葉にドキっとした。
この前直人に逢ってからどのくらいたった?
本当は逢いたくて逢いたくてどうしようもなくて。
でもそんなすぐに連絡なんてしたら、やっぱり軽い女だって思われるんじゃないかとか。
もしもかけて違う人が出たらどうしよう?って。
からかわれてるんだって…―――――
――――――でも、違う。
直人がそんなくだらないことする人じゃないってことぐらいは分かる。
例えブラウン管越しだとしても、人として、あの日私を助けてくれた直人がそんなことをするわけないって。
電話をかけられなかったのは、単に私に勇気がなかったから。
だけどそれは直人が優しいからで、そこを愛情だなんてはき違えないようにしないと…
それだけは肝に銘じておかなきゃ…
そう思っていたのに…―――――