プロ意識2


それから、奈々と一緒に会場に入った。

既に宴は幕を開けていて、そこにはあのダンサー達もいる。



「あの子、直人さんのこと好き、なのかなぁ?」

「…そこは、どうだろ。でも直人さんはゆきみ一筋だから、信じてあげなよ。ね?」

「うん…」



ふわりと微笑む奈々に小さく笑い返すものの、心のモヤモヤは取れなくて。

もしも好きだって言われたりしたら直人はどうするのかな?

そんな訳の分からない不安が私を複雑に追い込むなんて。



「臣!」



私を引っ張ってメンバーの所へ連れて行く奈々。



「わお、ゆきみちゃんだ!逢いたかったー!」



相変わらずな岩ちゃんに安定のハグをされた瞬間、パコーンってこれまた安定の直人の突っ込み。



「俺の、俺の。気安く抱きつかない、分かった?」



私を後ろ手で引っ張って自分の後ろに隠すけど、イライラする。

だって自分だってあの子抱きしめてたじゃん!なんて。

馬鹿みたいなやっすいヤキモチが私の心の中をどす黒くしていた。

スっと直人の腕を離すと、悔しいから一周して岩ちゃんの後ろにギュッと抱きついた。

だからか、くっつかれた岩ちゃんも、離された直人も「えっ!?」って顔で。

その横で、奈々がやっぱり心配そうな顔。



「別れちゃう?俺んとこきちゃう?」



すかさず突っ込む岩ちゃんの背中に顔を埋めて「ごめん」って小さく謝る。

ほんの一瞬シーンとなった。



「また直人さんに虐められちゃった?」



岩ちゃんの言葉に「ゆきみ」直人の声が重なる。

こうやって傍に直人がいてくれるとすごく安心するんだけれど、モヤモヤは取れなくて。



「私見てたよ、直人さん。」



小さく言葉にすると、「うん…」分かってるって顔で直人が私を引き寄せた。

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