存在意義3


「直人さんにはいつでも笑っててほしい…」



私の言葉に力なく笑う直人。

ちょっとだけ泣いちゃいそうな直人の頬を指でそっと撫でた。



「眞木さん達大丈夫?命に別状はないっていっても、報道された車見たら鳥肌たったよ…」

「…奇跡だと思う。あの状況で命があったのが…」



ポツリと直人が呟いたんだ。



「きっと守られたんだよ、眞木さん達。沢山の人の想いで…この世に必要な命だって…」

「かもな」

「直人さんも、私が守ってあげるよ」



ギュッと正面から腰に手を回して直人を抱きしめる。

すぐに私の背中に直人の腕が回されて。

分厚い胸板に顔を埋める。



「え?」

「絶対に何があっても私の想いが直人さんのこと守り抜く!必要なんだもの、直人さんは私に…」

「ばーか。んじゃゆきみも絶対死なねぇな。俺にとって誰よりも必要だから…」



人には存在意義がある。

臣くんがライブのMCで言ってた。

自分達7人は、このステージにたってみんなに思いを伝える為に出会ったんだと。

それがすごく分かる。

直人が抱えている使命はたくさんあって。

その中に少しでいいから私って存在があれば嬉しい。



「おばあちゃんになってもずっと、直人の隣にいたい…」

「いろよ、隣に。俺も…ゆきみの笑顔がすげぇ好きだよ…いつだって立ち止まった時に浮ぶのはゆきみの笑顔。迷いとか戸惑いとか色んな事ある中で、間違ってないのはゆきみの笑顔で、それがあるから全部乗り越えられる…ホントありがとうな」



真っ直ぐな直人の想い。

強い人こそ色んな思いを抱えているんだろうと思う。

私はそんな直人を一生傍で支え続けていきたい。

聖なる夜に、どうかその願いを叶えてほしい…



「それ、クリスマスプレゼント?」

「え?」

「そんな嬉しい言葉、額に入れて閉まっておきたいんだけど…」

「あ、そう?んじゃ額買ってきて飾ろうか?俺もゆきみに貰った言葉飾っておきたいかも…」

「ふふふ、じゃあ額買っておくね。敬浩くんに習字で書いてもらおうよ!」



そう言うと直人の動きがピタッと止まる。

まじまじと私を覗き込む直人は、つぶらな瞳を細くしてどら焼き型の口をゆっくりと開いた。



「まさか敬浩くんにも惚の字じゃないだろな?」



今時『惚の字』は死後だと思うけど…

って…すごい疑いの目で見られてない?私…



「まさか!敬浩には興味ないよ!」

「…そう言われると、何だかしっくりこないけど…」

「私はいつでも直人にほの字組だから!」

「ハハッ可愛いヤツ!」

「クリスマス、お祝いしよ?」

「うん、けどその前に…」



直人の瞳が緩く燃えていて、私の頬を包み込むように触れるとそのままチュッて小さなキスを落とす。

それで火がついたのか、直人の2度目のキスはなかなか止まらない。

ライブ後は興奮が抜けなくていつも激しいけど、今日は違うよね?

舌を絡めとられてジュルリと吸われると身体の力が抜けそうになる。

甘噛みされて私の自由を奪うキスにトロンとなっていく。

何度も繰り返されるキスに直人の腰に腕を回した瞬間…「ただいまのキス忘れてた」耳元で甘く囁かれたんだ。

もーずるいよこのタイミング。

私がその気になりかけたの分かっててキス止めるなんて。

ムウーっとしながら直人を見つめると、まるで分かっているかのよう、続く言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。



「今夜は体力有り余ってるから、覚悟しといて!」

「…え、私ない。そんなにできない!敬浩に来てもらって書き初めしよ、」

「うおおおおおおおおおいいいっ!!興味ねぇって言ったべ?」



直人から離れようとする私をがっちりホールドする。

ギューギュー抱っこされて幸せ気分。



「直人さんほら、メリークリスマス!」



ツリーを指差して言うとニッコリ微笑んで直人も言ったんだ。



「メリークリスマス、ゆきみ」



二人きりのクリスマスだね。



*END*

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