こんな展開
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直人の部屋に入って小さく息を吐き出した。
「緊張してる?」
クスッて笑って私のコートをかけてくれた直人は上着を脱いでラフな格好で私をソファーに誘導した。
「緊張しない人なんていないと思う」
「あははっ、そんな人気ないってオレ!」
「信じない、そんな言葉!EXILEmovieでHIROさんが”NAOTOは計算だ”って言ってたもの」
私がそう言うとギョットした顔で苦笑いをする。
「オレああいうキャラだって。もうゆきみちゃんまでそんなこと言うなって!」
直人がほんのちょっとだけいじけたような顔をして、それが物凄く可愛くて、だから「うん」なんて言ってみた。
「HIROさんの言うことより、オレの言うこと信じてよね?」
確認するみたいに言われて、また小さく頷いたんだ。
それからお酒を持ってきてくれて、前に座るのかな?って思ったけど、直人は私のすぐ隣に座って真っ直ぐに私を見てニコッて笑ったんだ。
「そんなことより…してよ?」
「え…?」
直人?!
してって、何を!?
ええ、やっぱりなの?
遊びでもいいかな…そう思ってしまいたい気持ちも半分ぐらいあって。
自分が傷つくだけだって分かっていながら止められない気持ちもあるってことを、今物凄く分かった。
分かったけど…――――
「ゆきみちゃん?」
「…遊びだよね?」
俯いたままそう聞く私に、直人が息を飲んだのが分かった。
「いや、真剣だけど…」
それからそう言われて。
「どうして?」
「え?どうして?」
「…私が本気になったらどーするの?」
黙ってしまった。
だから直人の気持ちが本気じゃないんだってすぐに理解した。
胸がチクッと痛くて。
何か言ってよ。
「…え!?オレマッサージしてって言ったつもりだったんだけど、え、マジで?!」
届いた直人のびっくりした声に思わず顔を上げると、期待の目で私を見ているなんて。
完全に墓穴じゃないか、私!
穴があったら入りたい…
「…直人さん、わざと!?わざと私に言わせたの?今の言い方でこんな展開だと、誰だって勘違いしちゃうよ」
自分が真っ赤になっているのが分かる。
自分の失態を直人のせいにするなんて、責任転換もいいところ。
でも恥ずかしすぎて普通じゃ直人を見ることなんてできそうもなかった。
「わざと…じゃないって!マジで!…けどそれ…もっと詳しく知りたいな、オレ」
そんな言葉と共に直人の指が私の髪をそっと掠めたんだ。
顔を覗き込まれて。
直人は何とも言えない表情で私を見ている。
全く心が読めないから不安は大きくて。
苦しい気持ちから開放されたいがために、私は直人の腕をギュッと掴んでそのまま引き寄せてみた。
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