いつか…4


蝋燭の明かりだけが灯ってるこの部屋。

外の大雨がザーザー窓を叩きつけているのかもしれないけど、私に聞こえるのは直人から奏でられる甘い音と、甘い吐息。

幸せはいつでも傍にある。

ギュッと直人の腰に腕を回すと、ほんの少し落ち着きを戻した直人がチュッとリップ音を立てて唇を離した。

その呼吸は少しだけ乱れていて、瞳も潤んでいる。

私だけが知る、直人が見せる限界の顔だった。




「直人さんもう限界?」




私が聞くと「分かる?」なんて眉毛を下げて困ったように笑う。




「うん。その顔は私だけが知ってる顔だね…」

「ん。あのさ……適当なことはまだ言いたくない。けど、やっぱりこの先の未来に女はゆきみしかいないから。今すぐどうのこうのってことは言えないけど…その時が来たらゆきみの未来を俺にちょうだい?それまでその場所守ってよ?」



……え?直人?

キョトンと見上げる私の頬を緩く指でなぞっていて。

そんな優しい顔しないで。

そんな愛おしそうな顔しないで。

泣きそうになる。




「直人さん…」

「予約な、ココ」



左手薬指にチュッて小さなキス。

もうだめ。

そんなこと言われたら私だって泣いちゃう。

ポロリと頬を堪えきれず伝う涙を直人の指がそっと拭った。




「いつも我慢ばっかさせてごめんな。だけど諦めないで俺を信じてついてきてほしい。絶対ゆきみを幸せにするからさ、いつか…」

「今日は直人さんのお誕生日なのに私が幸せ貰っちゃダメよぅ」

「いんだよ。俺が欲しいもんなんて、お前の幸せだけだもん!それ以上のもんはねぇよ!」




ギュッと抱きしめられて胸に顔を埋める。

直人に似合いそうなネクタイ買ったの。

ケーキ食べてシャンパン飲んでプレゼント渡して愛も伝えて……ってする予定だったのに、ズルイ。

いつだって適わない。




「じゃ、そーいうことで、イイ?」




感動してる私を他所に、目をランランとさせている直人は、そっと私のキャミソールに手をかけた。

しまった!!限界だった直人!

おもむろに顔を埋めてくる直人の頭を抱えたら、一気にスイッチが入ったのか、妖艶な直人がそこにいた。

その顔も知っているのは私だけだと思うと、幸せ以外のなんでもない。

これから先の未来に私も、直人しかいない。


お誕生日おめでとう、ありがとう、直人。





*END*

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