いつか…2
23時50分。
直人がシャワーから出てくる。
自分のブランドsevenの服を纏って何故だかリビングをモデル歩き。
「プッ、なぁに?てっちゃんの登場の真似?」
「え、知ってんの?」
「んー。それなりにファンサイト見てるから!」
「なるほど。まぁいい。哲也さんの名前禁止な、今日は。隆二も健二郎も出すなよ?」
夜遅くなるにつれて甘えん坊直人の登場で。
私のお気に入りのメンバーに対してのヤキモチも嬉しいものだった。
「ふふ、分かりました。直人さんしか見てないけどね私は」
「当たり前だろー。俺以外なんて見せねぇよ!」
「あ、こっち来て!もう時間ない!はい、ここ座って!」
無理やり腕を掴んで隣に座らせると、距離が近づいた。
二人じゃ食べきれないと思いながらもホールケーキの周りに蝋燭を並べた。
そこにチャッカマンで1個1個火をつけていく。
「初恋は何歳?」
「えっ?初恋?」
「そう、初恋」
何聞くの?って感じにほんの少しオドオドし始める直人。
13本目の蝋燭に火をつけて「このぐらい?中学一年ぐらい?」……私の言葉に目をぐるりと回して考えた後、ちょっとだけ眉毛を下げて苦笑い。
「いやこの辺…かな…」
私の手を上から握りながら誘導したのは6本目。
「6歳?」
「んーかな。いや言うても可愛いおママゴトの恋みたいな奴よ?」
「ちぇー。そんな早く恋に目覚めたなんて妬けるなぁ」
唇を尖らして直人を見ると、何だか嬉しそうに笑っている。
そのまま続けて16本目で止めてみる。
「ファーストキスはこの辺?」
ジッと見つめる先、直人はこれまた苦笑いで首を傾げる。
「んー。どーだったかなー。もー忘れちゃったかなー」
「ファーストキスだよ?覚えてるでしよ?初めてのキスだよ!」
「……まぁ。もうちょい前かな…」
持っていったのは14本目。
うそ、早い!
こんな早くに!?
またムスッとして「マセガキ!」ボソッと言うとやっぱり嬉しそうに笑っている。
そうやって直人の人生の歴史を語りながら辿りついたここ。
「ゆきみに出逢った。一生忘れらんねぇ年だな…」
直人の繰り出す言葉に胸が熱くなった。
私にとってそうであるのと同じで、直人にとっても私との出逢いが忘れられないと思い続けられる存在でいたいって。
「今でもたまに思い出す、あの日初めてゆきみと逢った日のことを。拓に感謝しなきゃなって。まぁ目の前でキスされたけど…」
「あれはその、わ、私のせいじゃないでしょ?」
「まぁ、そうだけど。今になって思えば俺の女にキスしやがって!って、腹立つわ!」
わざとらしくプンプンって、拳を頭にくっつけちゃう可愛いらしい直人。
「私たっくんバイトの中でも気に入ってたんだよ、これでも。卒業する時手繋いでとった写真今でも持ってるもん!」
「いやいやそれアウト!写真は捨てなさい!俺の以外全部捨てなさいよ」
「……今度ね」
「たくっ。けど、そのお陰でゆきみと知り合えて……好きになった」
ふわりと直人の指が私の頬を掠める。
そんな優しい顔で見ないで。
そんな愛おしそうな顔で見ないで。
今すぐ独占したくなっちゃう。