着信 2
「うそ…」
画面を見て目が点になった。
だってそこに映し出されていたのは*NAOTOさん*って文字で。
震える指で通話ボタンを押すと【あっ】小さく呟いたんだ。
「も、しもし…」
【ゆきみちゃん?】
初めて聞く、電話の直人の声に胸がギュッとなった。
「直人さん?」
【うん、直人です。今大丈夫?】
「あ、はい!」
誰に見られているわけでもないけど、何となくきちんと座りなおす私は、正座で直人の声を聞いているんだ。
【電話嫌い?】
直人の質問は全くの想像外で、キョトンとした顔のまま「え?嫌い?」答えた。
【いや…電話こなかったからオレからかけちゃったっていうか…】
しっかりしているけど、喋り方は少しふにゃっとした感じで、パフォーマンスしている時のいきり立っている顔からは想像もできないくらいで。
そんな喋り方が、安心できたりするんだ。
「ごめんなさい、物凄い携帯とにらめっこしてたんですけど。直人さん今忙しいかな?とか、色々考えちゃって。電話1つがこんなに勇気がいるのかって…って私何が言いたいんでしょうかね。すいません」
自分でも本当何を言っているのか分からなくて。
それでも私の言葉を聞いた直人は電話越しにもふわりと笑ったんだ。
【にらめっこしてくれたんだ、よかった!】
嬉しそうな直人の声に、私の方が嬉しくなる。
「そりゃそうです。直人さんですよ、そんな簡単にできませんよ」
【うーん。嬉しいような嬉しくないような。それよか今日って空いてる?】
あれ?
直人、たっくんから聞いてないの?
「あの、今日はその…」
【あ、何か予定あった?】
「あの、はい。あります」
【そっか残念…んじゃまた今度。電話マジでいつでもかけてくれていいから】
「はい、あの直人さん!」
【うん?】
「後でたっくんとlive行きますので!」
私が言うとガタガタって音がして。
【マジで?!来てくれんの?】
「はい!今たっくんから連絡貰って」
【そっか、そっか!了解!んじゃオレすげぇ頑張るから、楽しみにしててな!】
なんとなく直人がどんな顔をしているのか想像できるようだった。
「はい!かっこいい姿見せてくださいね?」
【おう、もちろん!!じゃあ、後でね】
「はい!また」
ピッと直人が電話を切ると、ツーツー機会音に変わって、私もスマホを切ったんだ。