守りたい3
―――人はどうしてそんな酷いことができるの…?
「直人に内緒で会ってくれるなんて、やっと俺と浮気する気になったの?」
「…なってません。哲也さん彼女いるじゃないですか?」
「”てっちゃん”でいいよ。そう呼んでるって直人がいじけながら言ってたもん。敬語もいらない。俺も直人と同じように扱ってくれていいよ!」
まるで質問に答えていない哲也さん…もとい、てっちゃん。
私と直人の危機を救ってくれたのは間違いなくこの人だと思う。
てっちゃんがいなかったら本当に思ってることの半分も言えてないし、今みたいな関係ではなかったと思う。
だから尊敬すべき大切な人であって。
前から冗談で直人にヤキモチ妬かせようって今丹なのか?あの一件以来、てっちゃんも私のLINEの仲間入りしたわけだ。
「…分かりました。でも敬語はやっぱり。てっちゃん相手にタメ語なんて使ったら全国の哲也ファンにフルぼっこにされませんかね?」
「そしたら俺が守ってあげるよ!まぁ好きに話して。それで…」
ズズズって珈琲を啜るてっちゃん前に、私は一度大きく息を吸い込んだ。
「直人さん…火曜日なんです…いつも火曜日で…」
「…うん、全く分かんないけど…続けて…」
スッとてっちゃんの奇麗な手が顔の前でクルリとひるがえされる。
「どうぞ」って。
「うん。火曜日に仕事が早く終わることが多くてだいたい呼ばれるんです。最初は何も思ってなかったんですけど…。火曜日ってバイキングの生放送じゃないですか…やっぱりそこに何かあるんだろうって思ってまして…」
本当はあの後死ぬほど必死で調べた。
直人がどんな状況に置かれているのかこと細かく出てきていて…。
また今夜、六本木でバイキングの打ち上げがあるってこの前直人が言ってた。
同じようなことされたらって思うと…
「…うん。正解だと思う!直人ああ見えて甘えん坊だから弱さとかすげぇ隠してるけど、実際は嫌なことだっていっぱいだと思うよ。基本は俺もポジティブだから良い方に良い方に…ってとらえようともするけど、やっぱり気持ちが折れたらもう終わりだと思うの。よく気づいたね、ゆきみちゃん。えらいじゃん。ゆきみちゃんなら俺も直人を安心して任せられるな〜」
ポンポンっててっちゃんの手が優しく私の頭を撫でた。
その優しさに張っていた気が崩れそうになるけどグッと堪えた。
ここで私が泣いても何の解決にもならない。
泣くのは直人の前だけって決めてあるから。
「てっちゃんに言って貰えると嬉しいです…」
「まぁ俺も直人がそんなに悩んでいたことはぶっちゃけ知らないけど!」
「え?そうなんですか?」
「うん。だって俺今リハビリ中よ!俺なんかより忙しい直人と事務所で遭遇する確率なんて5%ぐらいじゃない?マツさんとはよく会うけどね、俺」
「てっちゃんLINEの感じだと何か知ってる風な文章でしたよね?」
「あ〜それね、それはだって…」
そこまで言うと一端言葉を止めて私に顔を寄せた。
「ゆきみちゃんと会いたかったからだよ」
ドキっとした!
直人って人がいながらドキっとした。
でもこればっかりは仕方無い。
「ねぇねぇ、このままデートしない?」
「…しません。てっちゃん彼女さんはどうされたんですか?物凄いアプローチ受けたって直人さんから聞いてますけど?」
「まぁ受けたけど。だってアイツも男友達とか多いからさ、てっちゃんちょっとヤキモチ〜。俺も妬かせたい!」
目の前で口を尖らせているてっちゃんは可愛い以外の何者でもない。
彼女を想って私と二人で会ったならヨシとしよう。