守りたい2
黒いボクサーパンツの上からそこに触れると、しっかりと主張していて、だから「これも脱ぐ?」私が聞くとニヤッと口端を緩めて腰を私に突き出した。
「脱がせて」
「うん…」
ドキドキしながらそこに手を置いてボクサーパンツを下におろした。
なかなか明るい場所で拝むことの少ない直人の直人。
思わず視線を取られてガン見する私に、直人が一瞬だけハッとしたように息をのんだ気がした。
「直人?」
「ん?」
何となく、いつもと様子が違う気がするんだけど、何がどうって所までは分からないし、単に私の気にしすぎかもしれない。
でも…
「何かあった?」
「え?」
「何かいつもと違う気がする…」
「…え?そう?」
「うん。何か…元気ない?あ、ここは元気だけど!」
ちょっとだけ指先で摘むと「ンッ…」甘い声をあげた。
ほんのり目を伏せていた直人だけど、すぐに顔を上げて優しく微笑む。
「あのさ……―――」
「うん?」
「あの…――さ…」
言いずらそうな直人は、言葉を選んでいるのか、それとも言うのを躊躇っているのか…――その両方なのか…。
だから私は直人の首に腕を回してギュっと抱きついた―――というよりは、抱きしめた。
いつも直人が私にしてくれるみたいに、安心できる温もりを与えたくて。
不安なのか、悲しみなのか、怒りなのか、やるせなさなのか…―――
そんな顔の直人は珍しくて、でもそれでいい。
どんな顔でも、どんな気持ちでも私の前では全部見せてほしい。
「直人さん好き…」
「……ゆきみ」
「大好き、直人…」
「…ん。俺も…」
「好きだよ。どんな直人も愛してる…―――」
ギュっと直人の腕に力が込められる。
私の肩に顔を埋めてる直人だって、いいことばかりの人生じゃない。
それをここに持ち帰ることすら、直人のプライドが許さないのかもしれない。
私の前ではいつだってかっこよくありたいのかもしれない。
それがいいならそれで構わない。
それも私にとって、直人であることに何の変わりもないのだから。
でも不安や悲しみは誰かに自然とは伝わりにくい。
誰しも好きな人に心配かけたくないって気持ちの上で、笑顔の下の涙を隠してしまうものなんじゃないだろうか。
それが男ならば尚更。
直人を人間として強い人だとは思っているけれど、弱さがないとは思っていない。
誰だって弱さだったり、震えるぐらい怖いことはそれなりにあるものだって。
「ゆきみ…――俺の居場所って…どこ?」
…――居場所!?
顔を埋めてる直人と、小さく震える声。
…泣いてる。
初めてだった、直人が私の前で泣いたのは。
「…ごめ。変なこと言った。俺どうかしてる…。頭冷やしてくる…」
「待って!直人さん!私はずっと傍にいるよ。どんな直人さんも愛してるよ。一人で苦しまないで、私のこともっと頼って…」
直人が泣いてると思うとやりきれなくて私まで涙が出てくる。
そんな私を見て困ったように眉毛を下げる直人。
だから零れる涙を手の甲で何度も拭う。
「うん、サンキュー頼りにしてる」
チュって小さなキスの後、直人は脱いだ服を抱えてシャワーへと行ってしまった。