HERO 7


それでも嗚咽の止まらない私を見兼ねたのか、直人がポンっとステージの下に降りてきた。

そのままフワっと私を抱きしめる。


「ゆきみのご両親にも伝えたい…”ゆきみを生んでくれてありがとう”って…」

「直人さん…お誕生日おめでとぉ…」

「ありがと。俺を見つけてくれて…」


昨日は自分で言ったのに「ゆきみを見つけた」って。

今日は私なの?

惹かれあって出逢ったって思っていい?

出逢うべき運命だったって。


「直人さん、ズルイ…」

「はは、それ快感!!つーか久々に聞いたかも、ゆきみのソレ!やっぱいいな、新鮮…」


そう言って私を覗き込む直人にそっと目を閉じる。


「チューしてほしい?」


でもそんな言葉が続いて。

ハッと目を開けると、めちゃくちゃ嬉しそうに眉毛を下げて笑っている直人がいる。


「だ、ダメに決まってるよね、こんな公共の場所で…私としたことが…」

「だよな!みんないねぇーっても、もし万が一誰かに見られたら…―――結婚しちゃう?」


サラっと流しそうめん並にサラリとそんな声が届く。


「そうっすよ!いい加減にしてくださいよ、リーダー!」


聞こえた声に二人でバッと視線を向けるとそこにはスッキリした顔のメンバー達。


「ゆきみちゃん久々〜!」


お約束のように私に飛び着いてくる岩ちゃん。

ギュっと受け止めると「俺と浮気しちゃう?」って笑っている。

でもすぐにポカンって後ろから直人に殴られて。


「気安く触らない!」

「兄貴、結婚したら許されないけど、まだゆきみちゃんの心変わりは分かんないっしょ?」

「分かるわいっ!つーか、するわけねぇわっ!」


珍しく岩ちゃんに噛みつく直人が可愛くて。


「よかったっすね、ゆきみさん」


隆二くんが微笑ましくそう言ってくれて、本当に有難い環境に私を置いてくれている直人を誇らしく思った。


「んじゃみんなで直人さんの誕生日会、行きますか!」


臣くんが仕切ってそう促すと、みんながついていく。


「あの、私も一緒に…?」

「いいよ、勿論!あでもその変わり…みんな揃ってるからEXILEも…」

「…―――え?アキラも?」


思わず出た私の言葉に直人の顔つきがグワっと変わった。


「おいこら、今なんて言った?」


すごい剣幕で私の腕を掴む直人。

気迫が凄すぎてやっぱり一歩下がる私にズンって顔を寄せる。


「何も言ってない…」

「嘘つけ!今アキラさんのこと気にしたろ?」

「して…ない」

「てっちゃんとウサさんに続いてアキラさんか?四番目はアキラさんか?」


顎を掴まれて拷問。

涙目でブンブン首を横に振って「違うよ!三番目に隆二くん!アキラは四番目!」…「うおおおおおおおおおいいいいっ!!!」逃げ出す私を捕まえてくる直人から全力疾走をする。



「こら待て!言えっ、ちゃんとっ!!今日は絶対ぇ吐かせるかんな!」

「助けて、隆二っ!!」

「おまっ!呼び捨てすんなっ!」


鬼の形相で追いかけてくる直人だけど、私にとってはいつだってHEROだからね。

本当に生まれてきてくれて、ありがとう。




*END*

- 133 -

prev / next

[TOP]