HERO 5


8月30日。

実家に顔出すって言って、泊まりで出て行った直人。

久々にたっくんとLIVEに来て私も少しテンションが高い。

MCで臣くんが「みなさ――ん!今日は何の日か分かりますよね―――!?」そう言うと会場がワ――って歓声にまみれる。

それと同時に聞こえてくるハッピーバースデーの前奏。

直人が画面いっぱいに映って「うわ、全然気付かなかった!」って見え透いた嘘をついた。

メンバー、スタッフさん、会場にいるファン達…そして私の声も一緒に想いを込めてハッピーバースデーを歌っていると、今日この日を一緒に過ごせる幸せが身体の奥から込み上げてきて、涙が溢れて止まらない。

今や大人気の三代目のLIVE。

本当に沢山の人がこの日を待ちに待っていたって思えた。

嬉しそうに幸せを噛み締める直人の笑顔がそこにあって。

それを見守る嬉しそうなメンバー達。

大好きなファンのみんな。

今日この日がすごく大切で、すごく有難くて、すごく愛があって、すごくすごく幸せだ。


「ありがとうございま―――す!」


マイクを通してそう叫ぶ直人にみんなから拍手があがる。


「どうですか?豊富とかありますか?」


臣くんの言葉に直人は客席を見回す。


「じつは今日…来てるんっすよ。うちの両親が。普段はまぁ〜こんなこと言いませんけど、今日は特別なので言わせて貰いますよ…」


そう言って直人は関係者席の方を見つめて優しく微笑む。


「お父さん、お母さん!生んでくれて、ありがとうございます!!!」


とてもありきたりで単純な言葉だけれど、それが全てでそれが直人の気持ちなんだって。

同時に私も直人を生んでくれたご両親に心から感謝したい。

今こうして私がすごく幸せを感じていられるのは、他の誰でもない直人と出逢えたから。

今まで至って普通の生活を繰り返していた私を、直人の存在があるってだけで極上の幸せへと変えてくれる。

その姿も、その心も、全部全部大好き。


「一ノ瀬さん、大丈夫ですか?」


ポンって泣き崩れそうな私をたっくんが優しく撫でてくれて。


「うん…大丈夫。たっくん今日誘ってくれて本当にありがとう…。最高に嬉しい!」

「それ、言う人間違ってますよ。直人さんに言ってやってください」

「…うん」

「ほんっと、お似合いなんっすから、二人!」


ポンポンってたっくんに励まされて直人のお誕生日LIVEを無事に終えた。



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