部屋
――――――――――
――――――
―――
タクシーが高級そうなマンションの前に止まると直人は私を連れて下ろした。
深く帽子を被ってマスクをつけている直人。
はたから見たらいかにもな芸能人オーラを放っているように見えるけど、案外外でも気づかれないらしい。
エレベーターで15階を押すと、壁に寄りかかって私を見た。
何だろうか、この緊張感。
まるでこれがお持ち帰りかのように思えて。
途端に心臓が苦しくなってきた。
でもそれを直人に気づかれないように素知らぬ顔をして目を逸らしたんだ。
「到着〜」
だから、エレベーターから下りてそう言われた瞬間ビクッと肩を震わせた。
身体を触られたわけでも何でもないっていうのに。
経験が薄過ぎてそんな自分がほんの少し恥ずかしかった。
別に何も期待なんてしてない。
最初から期待なんてしちゃいけない。
「お邪魔します…」
そう言って初めて直人の部屋に入ったんだ。
ドキンと、鼓動が速まった。
―――
―――――
――――――――――