親孝行 3
「すごく素敵なステージだった。私の前でなら泣いてもいいよ?」
さっき、物凄く涙を堪えていたから。
男だしリーダーだし、そーいうプライドがあるのかもしれないし。
私がそう言うと少し眉毛を下げて「大丈夫だって」そう笑った。
「でも…ホントはすげぇ甘えたいの」
そんな可愛い言葉が続いて―――――
直人の顔がゆっくり近寄った瞬間、「直人さん?ゆきみちゃん?」寝室のドアの向こうからガンちゃんの声が聞こえた。
チッて舌打ちすらしていないものの、直人の眉間にシワが寄ったと思った瞬間、ドアを押さえてそこに私を押し付けた。
えっ!?
そう思ったのは一瞬で。
目の前で直人の瞳が閉じられてすぐにその甘い唇が重なった―――――
私の唇をなぞるように直人の舌が絡みついて…
吐息を零した瞬間、唇を割って舌が入り込んだ。
感情をぶつけるみたいな激しいキス。
情熱的なのはいつもだけれど、こんなにがむしゃらな感じな直人は珍しくて。
きっとレコ大のフワフワした感情が直人の中でまだ消化されていなくて、それをどこかにぶつけたいのかもしれない。
抑えきれない溢れる感情をどうにか落ち着かせたいのかもしれない。
ドアの向こうにガンちゃんが、メンバーがいるのは重々承知だけれど、感情的にキスを繰り返す直人を受け止められるのは私だけだって。
ゆっくりと掴んでいた腕を動かして直人の首に回してそのまま引き寄せる。
受け気味だったキスを攻めに変えて身体を直人の身体に巻き付けた。
慌てて私の腰に腕を回して抱きしめる直人に、それでもキスをくり返す。
直人の生暖かい舌に自分の舌を絡めながら首の手を柔らかい髪に差し込んでふわりと撫でると、チュッてリップ音を出して唇が離れた。
暗闇の中見つめ合う私と直人。
「どーすんのよこいつ」
直人が下半身を指差して苦笑い。
いつかの覗き見写真以上にモリッとしているそこにプッて笑いが込み上げる。
「笑い事じゃないでしょー!これで戻ったら俺立場ねぇよ…」
困ったように眉毛を下げて小さく息を吐く直人が可愛くて、その分厚い胸に顔を埋めた。
「おーい!くっつくと色々したくなるっちゅーねん」
「だって直ちゃん可愛いんだもん」
「そこは否めないけど。つーかありがと、少し落ち着いたわ」
フゥーって、息を吐き出す直人を見て、やっぱり感情をコントロールできていなかったんだって思えた。