宝物 5
抱きしめる腕を少し緩める直人の次の行動は簡単に予想できて。
そう思ったのも一瞬で、目を閉じる暇もないくらいのスピードで唇を重ねる直人。
リビングと寝室へ繋がる廊下のドアを背に、直人が私をドアに押し当てて繰り返すキスに、想いをぶつけるみたいな激しいキスに息があがる。
ギュっと直人の背中に回した腕に力を込めると、チュっとリップ音を鳴らした直人の舌、私の首筋をなぞっていく…
「ンッ…」
思わず漏れた自分の声に、カアーっと恥ずかしくなる。
でもそれを逆手に取るかのよう、私を見て不敵に微笑む直人はその顔とは裏腹に「ダメだ、もうイケそうよ、俺…」そんなカミングアウト。
私を甘く見つめる瞳はお酒のせいでトロンとしていて、頬も少なからず赤くなっている。
イイ感じに酔いも回っている直人。
シラフの時よりも、早いのは興奮しているせいかもしれない。
直人とこういう関係になってから、事務的でも定期的でもなく、本当にいつも愛されてるって感じることのできるこの行為を何度も繰り返してきた。
忙しい中でも私を抱く直人はパワー満開で、身も心も私を満たすことに全神経を集中させている。
だからこんなにも満足できて、こんなにも心地よくって、こんなにも愛を感じられるんだと思う。
だけど最初からちょっと早めだった直人は、今でも少し早めなのか?感じやすいのか、こうやって最中でも私を笑わせてくれる。
それも直人の魅力の一つなんだって思っている。
そしてこの直人の抱き方以外は無理であろう私の身体。
スッと指を直人のソコに当てると硬くなっていて…
ゆっくりなぞりあげると「うおっ…」喉の奥から声が漏れた。
「直人さんやる気満々だね」
「当たり前だろ…いつだってゆきみを抱くことに命かけてるっつーの俺」
「あっは、高校生みたい!」
「はぁ〜?」
「若い〜」
「いやいやほとんど変わらんやろ、俺とゆきみ」
「まぁ…」
「この溢れる気持ちとコイツを受け止められんのゆきみだけなんだから責任重大だぞ?」
直人が至近距離でキスを繰り返しながらそんな会話。
そんな甘い時間が好きみたいな直人。
いつも明るい直人も時々こうやっててっちゃん並に愛をロマンティックに語ることもある。
勿論それを知っているのは世界で私たった一人で。
「直ちゃんのことだけだけどね、私も受け止められるのは…」
「ほんまか?てっちゃんもウサさんも…浮気はないだろな?」
「しないよ〜。てっちゃんだって彼女いるんでしょう?」
「…ああまぁ…よく分かるね?」
「うん、だって女の扱い慣れすぎてる、てっちゃん。直人さんとこうなる前からてっちゃんは女いるんだろうな〜って思ってはいたけど…」
私の言葉に苦笑いを零す直人。
ファンって怖い…とでも言いそうなそんな顔で、ポリっと頬をかいた。
「今度葵さんにも会わせてやるよ、てっちゃんの彼女。ゆきみと年も近いし話合いそう…。啓司さんの彩名さんにも…な」
「うわ、嬉しい!!メンバーさんの彼女さんと話てみたかったんだ!」
「予定聞いてな。とりあえず今は俺のこの気持ち受け止めて…」
そう言って直人は私の腕を引いて寝室へと向かう。
「っていうかやっぱりメンバーみんな彼女いるのかぁ〜…これが現実なのかぁ〜」
ベッドの上でゴロンと転がってそうボヤく私を見て、そそくさと服を脱がしていく直人。
私のボヤキが聞こえていないのかチュってキスを落としながらアウターを脱がせて下着姿にされた。
「隆二もいるの?彼女…」
「うおおおおおおいいっ!?俺に集中して、ゆきみ!」
「気になる…」
「いねぇよ、三代目はっ!健二郎以外っ!!」
「いるんだ健二郎…」
「ゆきみってばぁ!!」
泣きそうな顔で私を求める直人があまりに可愛くてちょっとだけ意地悪したくなった。
それでもいつでも私を幸せにしてくれるのは、世界でたった一人、直人だけだよ…
大事な大事な私の宝物。
「直人さんも浮気しないでね?」
私の言葉に満足そうなドヤ顔が届いたんだ。
*END*