宝物 3




「すいません、ウサさん、哲也さん」



苦笑いでそう言って私の腕を引くと、自分の前に出す直人。

それから一つ息を吐きだして言ったんだ。



「自分の彼女のゆきみです。よろしくお願いします」



ペコっと深く頭を下げてそう言ったから、慌てて私も頭を下げた。



「はは、顔あげて二人とも」



優しく言ってくれたのはウサで。

直人が顔を上げたのを確認してから静かに私も頭を上げた。



「ゆきみです、はじめまして…」



緊張しながらそう言うと、スッと手が出てきて「宇佐美です、初めましてゆきみちゃん」…嬉しすぎる。



「すみません…」



そう言いながらそっとウサの手を握った。



「哲也です、よろしくねゆきみちゃん」



続くてっちゃんも握手をしてくれて…

今日は手洗いたくない!なんて暢気なことを思ったんだ。



「直人から話は聞いてるよ!」



そんなてっちゃんの言葉から始まったお話は尽きることなく進んでいく。

夜は次第に深まってお酒も進む。

緊張していたわりに柔らかく接してくれるから私も遠慮しながら会話に参加させて貰って楽しい時間はあっという間に過ぎていった――――――





「ゆきみちゃん今度直人に内緒で飲みに連れてってあげるからLINE教えて?」

「いやいや哲也さんっ!!全然聞こえてますからっ!!一応俺のなんで」

「一応なの、直人〜?一応なら俺もいいじゃんっ!気にいっちゃったんだよねぇゆきみちゃんのこと!」



意地悪なてっちゃんの顔が近付いてきて私と唇が触れ合う寸前のところでわざとらしくリップ音を鳴らす。



「ダメダメ!絶対ダメ!いくらてっちゃんでもウサさんでもゆきみだけは渡さないっすよ!やっと見つけた宝物なんっすから!」



…え?

今なんて、直人…?

あまりにサラっと言ったせいか、直人の言葉は自然と流れ出ていきそうで。

私をギュっと抱き締めるその温もりに顔を伏せた。

聞き間違えじゃなかったら直人、私のこと宝物って言ったよね。

しかも大事なメンバーの前でそんなこと…

やばい、我慢できない…

目がしらに一気に涙が込み上げて、喉の奥がぐっと詰まる。

心臓がドキドキして、直人の腕にキュっとしがみついた。

そんな私に気づいているのか、直人の手が私の髪を緩く撫ぜて…



「冗談だよ、直人!直人の話聞いてるだけでゆきみちゃんのことどんだけ好きかなんてみんな分かってるって。HIROさんにも報告したんだろ…ゆきみちゃん傷つけないようにしっかり守ってやれよ!」

「もちろんっすよ!一生大事にしますよ」



ギュっと抱き締める腕に力が込められて堪え切れない涙がポロっと頬を伝った。

なんかもう、何もかもズルイ人だなぁ〜って。

泣いてることを気づかれたくなくて、酔ったフリをしたんだ。


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