男の勝負 2
「じゃーねん、直人!一人でヤケになるなよ!」
相変わらず余裕のてっちゃんは、既に私の手を握っていて。
呆然としている直人くんを見て面白そうに笑っている。
「ゆきみちゃん!自分を大事にして!」
私とてっちゃんの繋がった手を無理やり剥がして私の手を両手で包み込むように握り締めてそう言う直人くん。
まるで祈るようなその格好に自然と頬が緩む。
自分の置かれている状況とは違う感情で私の中はいっぱいで。
「あ、ちょっと、俺のゆきみ!離せよ直人〜」
てっちゃんが私を引き寄せて肩をギュッと抱いた。
「もう〜てっちゃん、やだー!ゆきみちゃん持って帰るの止めてー」
子供みたいに膝に手をついて屈む直人くんは可愛くて。
これがいわゆる母性本能なのか、はたまた愛なのかは……―――――
「勝負は勝負だろ、直人!大人しく負けを認めろよ!安心しろよ、無理やりやんねぇーから。同意の上にすっから!」
意地悪くそう言うてっちゃんはきっと私を一夜で落とす自信があるんだと。
でもここまで自信満々のてっちゃんが今の今まで何も仕掛けてこなかったのがちょっと嘘臭い。
いくらイケメンで男前だからって好きな女ができたらすぐにでも自分のモノにするんじゃないかって。
「てっちゃん、行こう」
「はいはい!じゃあね、直人!」
ポンポンって凹んだままの直人くんの頭を軽く叩くと、てっちゃんは私の肩に回した腕に力を込めて駅の方へと歩き出す。
その横顔はやっぱり楽しそうで。
だから分かった―――――てっちゃんが何を考えているのか。
むしろ初めててっちゃんの意図が読めた。
「てっちゃんってやっぱりカッコイイなぁ」
私がボソッとそう言うと視線を私に落として苦笑いをした。
「……女に読まれたの初めてだ俺…何か悔しいな」
顔を崩してそう言う。
いつものてっちゃんより人間っぽくて私には逆に好感度があがる。
「私すごいね、じゃあ!」
「悔しいからキスさせてよ」
「…やだよーそんなのされたら本気になっちゃうもーん!」
そう言って笑ったらてっちゃんがハッとして私を電柱に追いやるようにしてギュッと抱きしめた。
そのままそっと頬に顔を埋めるように近づく……
「これで怯んだらゆきみは渡さない!」
そう小さくてっちゃんが言ったら、バタバタと走る足音がして、物凄い勢いでつよく腕を掴まれたんだ。