揺れる女 4



「俺はいつでも素直っすよ」



ニコって直人くんが笑うとフワっときもち椅子をずらして私の方に寄った。

私越しに直人くんを見ていたてっちゃんは煙草を灰皿で潰すと、着ていたスーツの上着を脱いだ。

椅子から立ち上がって真っ直ぐに直人くんを見る。



「直人、勝負しようよ?」



それからゆっくりとそう言って。

何かを言われる?と思っていたのか、何となく構えたような空気の直人くんは「勝負?」素っ頓狂な声を出した。

カウンターに手をついたてっちゃんはニヤっと笑うと後ろを指差して言ったんだ。



「あのダーツ。勝った方がゆきみをお持ち帰り!どう?」



バーの後ろにあるダーツスペース。

ここで遊べるようになっていて。

てっちゃんの言葉を聞いた直人くんの目つきが変わって見えた。



「…ゆきみちゃん、いいの?」



この期に及んで答えを私に振ってきた直人くん。

正直なところ、どっちでもいいっちゃどっちでもいい。

でも、直人くんがいいと思えば直人くんで…てっちゃんがいいと思えばてっちゃんで…。

心の奥底に眠っている私の感情を引き出すには絶好の舞台なんじゃないかって…。

だから真剣に見つめる直人くんを見て「うん」そう言ったんだ。

その瞬間、直人くんの目が大きく見開いて…「分かったその勝負、のった」そう言って直人くんも椅子から立ち上がって上着を脱いだ。





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