揺れる女 3
「あ、ほんとだ!これなら飲める」
柑橘系の甘いジュースみたいなカクテルしかほとんど飲めない私だけど、直人くんにオススメしてもらったワインを一口飲んだらスッと喉の奥に入り込んでいった。
そんな私を見て嬉しそうに微笑む直人くん。
なんだろう…スーツでバーに来ているってだけでいつもと少し違く見える気がする。
「でしょ!これならゆきみちゃん飲めるって思ってこの前キープしといたんだ俺!」
サラッとそう言ったけど、それってわざわざ私のためにしてくれた…って思いたくなっちゃうんだけどー…。
何ともいえない甘い感情を飲み込んだ私は直人くんから視線を逸らした。
そんな私を反対側から見つめているエロ哲也。
もとい、イケメンてっちゃん。
「な、なに?」
あまりにジーっと見つめるから思わずそう聞く。
カウンターに肘をついているてっちゃんは「なーんか俺邪魔?」なんて言葉を飛ばしてきて。
「邪魔邪魔!分かってるならいいっすよ、遠慮してくれても!」
すかさず突っ込む直人くんが可笑しくて。
それでもあくまで余裕に見えるてっちゃんは正直何を考えているのか分からない。
「いいなー直人は素直で」
そう言ってワインを口にするてっちゃん。
ゆっくりと視線を私に向ける。
ドキンと胸が弾けた。