▽ 合格
「でも私…遊びの恋愛するつもりないから…」
「え?」
急に真面目な顔してそう言うユヅキちゃん。
両手で俺の腕を掴んでちょっと身体を揺らしながら俺を見上げる。
「えっちしたいだけなら私帰るよ。もう30だもん…さすがに将来考えなきゃダメじゃん。男の人は結婚とか遅くてもいいかもしれないけど…女はそうはいかないでしょ?」
「うん」
「だから、今の時点で私は健二郎くんに興味があるけど健二郎くんの気持ち…聞いてないし…」
「あるよ、ある!!むっちゃあるよっ!!そんなえっちとかどーでもええよ!俺ユヅキちゃんにキュンってするこの気持ち大事にしたいねんっ!」
仁王立ちで絶対離すもんか!って思いで、そう叫んどった。
キョトンとした顔のユヅキちゃんが、次の瞬間…「ブ―――!」って笑いだした。
俺にトンって抱きついてその場でバッタバタ足踏みして笑っているユヅキちゃん。
フワリと彼女の甘い香りが俺の鼻をつく。
一気にまた心拍数があがって、そっとユヅキちゃんの背中に腕を回す。
うーわ、抱きしめてもーた女の子…
なんや、柔らかすぎひん!?
こ、壊れそうやな…
「合格、合格!健二郎くんってば私にキュンキュンしてたんだぁ〜?」
下からニーって悪戯っぽく歯を見せて笑うユヅキちゃん。
俺分かった…
敵わへんわ、この子に。
「ご、合格ありがとう…」
「あっは、もう可愛すぎる!じゃあ家行ってもいい!?」
「うへっ!?家っ?」
「うん、私に興味あるんだよね?」
「むっちゃあるよ」
「私も、むっちゃあるよ…」
「うん、俺もむっちゃある…」
「連れてって、健二郎くんの家…」
腰に腕を回して下から上目づかいで俺を見つめるユヅキちゃんにノックアウト寸前の俺はコクコクって顔だけ動かしてその場でギュっとユヅキちゃんを抱きしめた後、ゆっくり離れてその手を握った。
今度は俺の方から指を絡めて―――