▽ 下心
飲み屋を出ると壁にもたれていたユヅキちゃん。
「お、お待たせ!」
「バレたでしょ?」
俺を見て開口一番そう言った。
クスってちょっとだけ余裕そうに笑いながら。
「え、何で分かるん?」
「な・ん・で・も・」
鼻の頭を指で押しながらそう言うユヅキちゃんにドキっと心拍数があがる。
触れたい…―――そう思う俺は変態か?
抱きしめたいって…そんな気持ちにかられている俺は、脳内で色んな妄想が繰り広げられていて…
無言でユヅキちゃんを見つめる俺にスッと手を出した。
「手、ちょうだい」
「…え?手…?」
「んもう!健二郎くん本当なんの経験もないんだなぁ〜」
そう言ってユヅキちゃんの方から手を絡めてニッコリ微笑む。
「可愛いね」
「ユヅキちゃんのが可愛いい…」
「ん?」
「…俺よか、ユヅキちゃんのが可愛いやん!って…」
ちょっとだけ大きめの声で言う俺にグっと身体を入れてくる。
柔らかい感触が腕に当たって…
「あかん…」
どうしようもなく、触れたい!!
ジッと見つめる俺に「どこ行く〜?」軽く聞かれて。
今熱したこの熱い気持ちがシュ〜と消えそうになった気がする。
「あ、え…どこ?」
「うん、この後二人っきりでどうしたい?」
ど、どうって…そりゃあ〜
「あ〜!鼻の下伸びてる!えっちなこと考えたでしょう?」
すかさずそう言われて慌てて顔を引き締めた―――ものの、それはもう遅くて。
「顔に出てもーてた?」
「うん。でも素直に認めたから許してあげる!下心がない男なんてつまんないし!」
…やり手やなぁ、ほんまこの子。
つまんない!って言い切るところがある意味すごいわ。
臣や隆二でも敵わんかもなぁ、もしかしたら…
「それだけなら余るほどもっとるわ」
「あっは、受け止めちゃおっかな〜」
…受け止めてくれやっ!
そんな願いを込めてユヅキちゃんを見下ろすとニッコリ微笑み返された。
あ〜もう、ほんま心臓痛なっとるやん俺…。