けんじろうの恋愛事情 | ナノ


▽ 秘密の恋愛事情



後から乗り込む俺を見て思いっきり身体ごと壁側向いて避けるこいつ。

あからさまやし。


「おい」

「………」


完全に無視を決め込んでるこいつの頭をポカンと軽く叩いた。


「触んないでセクハラ!」

「セクハラちゃうわ。ちゃんとこっち見いや」


くるりと肩を掴んでこっちを向かせた。

俺を睨むそいつの頭をポンっと撫でる。

えっ?って、不意をつかれたような顔で俺を見上げるから。


「悪かったな。この前は言い過ぎて。お前の気持ちに気づかんでずっと悪かった」

「な、なによ、今更。あんたのことなんて別に何とも思ってないし」

「そうかぁ、それならよかったわ。これからも同期として面倒見てや…。彼女にはできひんけど」


俺の言葉に泣きそうな顔で「ムカつく」なんて言われた。


「あの人の影響でそんなにいい男みたいになっちゃってるあんたがムカつく!」


憎まれ口を叩いて自分の階で降りてった同期。

さて、ユヅキんとこに帰りますか。

自分の家なんにピンポンを押したんは、出迎えてほしいからで。

ガチャンと鍵を開ける音の後、大好きなユヅキの笑顔が俺を出迎えた。


「けんじろうおかえりなさい!」


飛びつくユヅキをギュッと抱きしめた。


「ただいま、ユヅキ。むっちゃ逢いたかった」

「私もー。大好きっ!」


大好きって言われてこんなにも嬉しいんはユヅキだけや。

胸に閉じ込めたユヅキを覗き込んで、ちゅって小さなキス。

ふふって笑うと腕に絡みついてリビングへと一緒に歩く。


「報告どうだった?」

「あーまぁまぁや」

「根掘り葉掘り聞かれたんじゃないの?」

「そうやねん、あいつら。けど言わへんよ。せやって俺とユヅキだけの秘密でおりたいねん…」

「やだ、可愛すぎる、けんじろ…。ねぇお風呂一緒にはいろ?」

「ええよ。けどのぼせるかな、結構飲んでん…」

「あはは、はなっからヤル気なの?」

「えっ?あ、いやぁ…そういうわけちゃうねんけど…。まぁちゃうことないねんけど…」

「ふふふ、じゃあ今ここでする?」

「え?ええのん?」

「ええよ」


エセ関西弁を使ったユヅキに俺はソファーの上に押し倒された。

やっぱりまだまだユヅキには敵わへんねんな。

でもそれが、俺とユヅキの秘密の恋愛事情ってやつや。



*END*



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