▽ 抜け出す…
いつもやったら鍋奉行を発揮する俺やけど…
「健二郎くん、好き嫌いは〜?」
お皿を持ってよそってくれはるユヅキちゃん。
うわ家庭的やん!
「ええよ、俺がよそうって。ユヅキちゃんこそ好き嫌いは?」
「ふはは、優しいんだねぇ、健二郎くん。ますますヤバイなぁ〜。あ、私野菜全般苦手!」
「ほんまっ?」
「肉団子と白滝いっぱい入れて!あとキノコも苦手…」
「食われへんやん!ほぼ!」
「大丈夫、楽しいから美味しい!ねっ!?」
首を横に傾げてそんな可愛いく横から見つめるからドキっと心臓が音を立てた。
「…うんなんや俺、あかんかも…」
女にこうやって好かれたことがなかったせいか、完全浮かれてるって分かってる。
でもこの呪縛を解く方法があるなら教えてほしい。
「あかん、の?」
標準語使う子のエセ関西弁はむっちゃ嫌やねん、ほんまは。
それなんに、なんでやろ…むっちゃ可愛く映ってる…
「あかん、のよ…」
「それはどうして?」
そんな俺に追い討ちをかけるユヅキちゃんに、また心臓が跳ね上がる。
ニタァ…って笑って「いやその色んな俺の事情があってな…」モゾモゾと腰を動かす俺を見てユヅキちゃんが俺の太腿に手をついて「二人で抜け出す?」耳元で甘い誘惑。
ご、合コン抜け出すってどないするん!?
思わず向いでイチャイチャしとる臣ちゃん隆ちゃんを見つめるも俺の気配に全く気づくこともない。
「あの、分かるやろ?俺こーいうん初めてやから…抜け出すってどないするん?」
俯きながら言う俺にクスって笑うユヅキちゃん。
まぁそらそーやろ。
男の癖になんやって話やん。
けど事実やからどーしようもないねん。
「じゃあこの鍋食べ終わったら私が荷物持ってトイレに立つから、健二郎くんも荷物持って5分したらトイレって出てきて!」
「なるほど…」
「みんなに気づかれないようにだよ?できる?」
「でき…るかなぁ〜」
全く自信のない声にそれでもユヅキちゃんは笑ってくれて。
「早く二人きりになりたいなー」
ほんま、あかんねんっ!!!