▽ 守らせて
ギュッとユヅキを抱きしめる。
なんやろうか、この切なさ。
ユヅキは今ここにおって俺に触れてるのに、何でか心が痛い。
「けんじろー」
「ん?」
「私のこと信用できな」
「してる。昨日の今日かもしれんけど、俺はユヅキが好きやし、このままユヅキとずっと一緒におる」
「…おるの?もう決めたの?」
可愛いエセ関西弁にユヅキの髪をふわりと撫でた。
「おるの。もう決めてん。決めてんいうか、そうしたい…」
こんな可愛い女、離してたまるか。
「いいよ。私もけんじろーに運命感じたから。たった数時間でけんじろー、すごく男っぽくなっちゃうから、ドキドキする」
ユヅキが下から俺を見上げてそう言うた。
え、男っぽくなっとる?
俺、ユヅキをドキドキさせられてるん?
なんや、顔緩む。
ニヤついた顔でユヅキの鼻にチュッてキスを落とすと、物足りない顔してユヅキが「唇がいい」また可愛い顔で可愛い声で可愛いこと言うねん。
ほんま、下半身疼くからやめてやー
なんて思いながらも嬉しくて俺はユヅキの唇にチュッて触れるだけの小さなキスを落とした。
だからもっと欲しそうな顔を見せるユヅキ。
足りないやろ?
ちゃんとしたの欲しいんやろ?
「けんじろ、もっと…」
そんな言葉を待っとった俺の疼きそうな下半身に、ユヅキの手がムニュっと触れた。
「あっ、ちょっ…」
思わず盛れた情けない声にユヅキが目の前で爆笑してる。
けど分かってん。
なんで胸が切なかったんか。
ユヅキの笑顔守れんかったからやって。
笑ってるユヅキの腕を引いてもう一度胸に抱きしめた。
「健ちゃん?」
「好きや。嫌な思いさせてごめん。誰がどう言おうと俺はユヅキを信じてるし、ユヅキが好きやって気持ちは変わられへんよ。これから2人で色んなこと知って、一緒に乗り越えてこ?何があっても俺がユヅキんこと守ったる。いや、守らせて欲しいねん…」
「健ちゃん嬉しい…ほんとずるいんだから。朝ご飯より健ちゃんが欲しくなっちゃうよ」
「奇遇やな、俺も一緒や」
ユヅキを抱きしめたまま食卓に並ぶ朝食の前、大きなソファーにユヅキを沈めた。