▽ バックハグ
チュ…唇が触れ合うとほんの小さいリップ音がして。
あかん、足りひん!
そう思ってユヅキちゃんの腰をこっちに引き寄せてドアにトンって背中をつける。
ユヅキちゃんの腕が俺の首に回されて細い腰を思いっきり俺ん下半身に引きつけながらのチューやから…
首に回されたユヅキちゃんの手がそっと俺ん腕を通ってゆっくりと太腿に移動した。
そのままモリっとしてしまってる俺をスッと手で擦る。
「あふっ…」
何とも言えん声が俺から漏れた。
目を開けると口端を緩めてご機嫌なキミ。
「健二郎くぅん…早く家入れて」
「お、おん!まっとって!」
すぐさまクルリと反転してドアに鍵を差し込む俺に、後ろからギュウ〜って抱きついてくるユヅキちゃん。
うーわ、これバックハグやんなぁ。
臣ちゃんが好きやって言うとった奴やないかい!
臣ちゃん、隆ちゃんの話には夢があって。
いつも俺の上をいくその内容に憧れずにはいられんかった。
「はい、はい、どーぞ!」
ユヅキちゃんの腕を引いて鍵の開いた部屋に招き入れた。
パチっと瞬きをしているユヅキちゃん。
「え、え…!すごいよ、健二郎くん!なにこの部屋…」
白いパンプスを脱ぐとパタパタと小走りで奥まで行くユヅキちゃん。
スカートがユラユラ揺れて思わずニヤける。
「すごい?」
俺がユヅキちゃんを捕まえるように腕を掴んで、そのまま自分の腕ん中に閉じ込めた。
これもバックハグ。
臣ちゃん直伝の女が好きな格好第一位、バックハグ。
何度これを臣ちゃんで試したことか。
やっとユヅキちゃんに出来る幸せをめっちゃ感じていた。
「すんごい汚い部屋かと思ったのに、めっちゃ奇麗!アンティークも可愛い。お洒落だよ、健二郎くん!もう大好き」
クルリと俺ん中で反転して正面から抱きつくユヅキちゃんからまた甘い香りがして。
柔らかいその身体をそっと抱きしめる。
「好きやねん、こーいうの」
「ここに住みたい!」
「えっ?えええっ?」
「嘘、冗談!でもいっぱい遊びに来る」
「あ、冗談ね。いやかまへんけど…」
「も〜やっぱツボだよ健二郎くん。運命感じるなぁ、私」
フワリと微笑んでペロっと舌を出すユヅキちゃんからのキスの相図。
覚えたてのそれに、俺はチュっと小さなキスを落とした。
「うん、もっと…」
ユヅキちゃんの甘い声に一気に心拍数があがった気がした。