直人さ、ん…
なんとなくみんなの様子がおかしい気もしたけど、気のせいだろうか…。
一週間ぐらいボーっと過ごしていた。
起きてご飯食べてお昼寝して…
哲也が私をそうやって甘やかすから…
「嘘…3キロ増えてる!!信じらんないっ!!!てっちゃん、てっちゃん!」
ちょうどシャワーを浴びた後だったのか、タオルで髪を拭きながら哲也がリビングに入ってきた。
「どうしたの?」
「増えてるの、体重!!臣みたいにデブになってる!」
「ブッ、臣みたいって…。俺はデブなユヅキも好きだよ」
「やだ絶対、ダイエットしてやる!私マラソンしてくる!」
「ちょっと、俺も行くから待っててよ」
「3分だけね!」
ジャージに着替えると私はポカリを一気飲みしてから外に出た。
久しぶりに浴びる太陽に目がクラクラする。
本当に3分で隣にやってきた哲也は当たり前に濡れ髪セクシーで。
かっこいいって言うのもちょっとしゃくだからそのまま走り出したんだ。
「どんだけ体力ないの?」
コンビニの前に座りこんで早10分。
まだ心臓が苦しいよ。
「ポカリ買ってきてあげるから」
「いい、自分で行く!これぐらいできる!」
立ち上がった私をクスって笑って見ている哲也。
ペッドボトルのポカリを二本手にレジに並ぶ。
「248円です」
ポケットを探ってしまった!と思う。
ジャージに着替えたからお財布忘れちゃった。
慌てて外にいるであろう哲也に視線を向けようと身体を動かしたら、横からスッと1000円札が出てきた。
「よかったらどうぞ」
振り返った私の目に入ったのは可愛い人。
ニコっと微笑んだその人は、八重歯があってドラ焼きみたいな形の口で…
「え、あのでも…」
「いいから!ね?」
手に1000円を握らそうと彼が私の手を握った瞬間、心臓がドクンっと脈打った―――
なに、これ…
目が、離せない…――――
「あ、りが、と…う…」
お金を払って外に出るとすぐに彼も着いてきた。
何でか哲也の姿がそこになくて…
「あの、名前教えて?」
「直人。片岡直人です…」
「ナオト?」
「うん、直人」
どこかで聞いたことある?
ジッと見下ろす瞳は優しくて温かくて…
「直人さ、ん…」
「うん、ユヅキちゃん…」
なんで知ってんの?私の名前―――
「どうし、て?」
顔をあげた私に影を作るように直人が私にキスをしたんだ。