いつもと同じ朝


いつもと同じ朝。

隣には哲也が眠っていて、相変わらず綺麗な顔だなぁーなんて見とれる。




「てっちゃん、お腹すいた」

「んー今何時?」

「8時」

「起きるか。でもその前に…」




チュッて哲也のおはようのキスが唇に触れた。




「おはよ、ユヅキ」

「おはよう、てっちゃん。何か、身体怠い……」

「疲れてんだろ?しばらく仕事ないし、ゆっくり過せばいいよ!」

「うん…」




リビングに行くと啓司が朝ご飯の準備をしてくれていて、ベーコンのいい匂いが食欲を誘う。




「おっす。よく眠れたか?」

「え、気持ち悪いな、啓司がそんなこと聞くの…」

「お前なぁ。まぁいいよ、今日は特別だ。広臣起こしてきてやって?」




何故か笑顔を振りまく啓司がキモイ。

私は臣の部屋のドアを開けて中に入る。




「臣ー朝だよ。起きて!」

「んー。あ、ユヅキ!寂しかったよ俺…」




ふわりと抱きつかれて、胸に顔を埋める。

相変わらず甘えん坊な可愛い弟を仕方なく抱きしめ返す。




「もっとぉ…」

「朝から元気だねぇ、ココは」

「アッ…ちゃんと触って…」




甘い声を出す臣のオデコをパシッと叩く。




「いってぇ!いいじゃん、減るもんじゃないし!」

「やだよ。てっちゃんに怒られるもん!」

「……なんで?」

「え?」




急に真剣な顔になる臣。

私の手首を掴んだまま下から見上げている。




「なんで俺じゃないの?」

「なんでって、なんでむしろ怒ってんの?」

「だって俺、ユヅキのこと好きだもん!」

「軽いなぁー」

「ちょっと、なんだよそれ!」




臣が力任せに私の腕を引いてベッドに組伏せる。

上から馬乗りにされても、ドキドキなんてしないわけで。

たぶん世間一般的に臣は物凄いかっこいい部類で、街ゆく女の子達は振り返るぐらいの美を奏でている。

だけど人には好みというものがあって、私の好みには当てはまらない。




「離してっ、」




ドクンっと心臓が波打つ。

なんだろ、この感覚。




「離さないっ」




言われた言葉が脳を刺激している。

何か大事なことを忘れているような気分だった。

ボーッと考えていると、臣が私の服に手を入れて好きに遊んでいるからそのままにしておいた。

そろそろ哲也が怒鳴りにくるって、分かってる。





「臣、俺の女に何してんの?」




壁に背をつけて腕を組んだ哲也が静かにそう言うと、臣が私の上から飛び起きた。

そんな臣が可笑しくて笑う。




「てっちゃん臣に女の子紹介してあげなよ!」

「そうするわ。ユヅキおいで」




手を伸ばす哲也の方に引き寄せられるように行くとそのまま肩に手を回されてリビングまで行く。

さっきはいなかったアキラと剛典もいて、「珍しいね、全員揃うのなんて」私の言葉に剛典が寂しげに微笑んだんだ。


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