満天の星


「着いた。やったね、特等席!ついでに2人きり!」




車を停めて外に出る直人。

助手席のドアを開けて私を外に連れ出した。

手を繋いで柵のあるギリギリまで行って空を見上げる。

雲一つない真っ暗な空。

そこに散りばめられた星が煌々と輝いている。




「月が出てると明るすぎちゃって見えないんだけど、三日月なら光も抑えられてるから。綺麗だね…」




後ろからギュッと直人が私を抱きしめながら耳元で甘く囁く。

心臓がキュッと掴まれるような気分で。

腰に回された直人の手に自分の手を重ねると、チュッて髪に小さなキスが落ちた。




「直人さん…」

「ん?」

「ずっとここにいたい」

「え?」

「世界で2人だけになりたい…誰にも邪魔されたくない……好き、直人さんのこと大好き…」




綺麗な天の川と、大好きな直人。

もうこれ以上何もいらない。

何も望まない、だから……




「離さないで…」




泣き出す私を何も言わずに強く抱きしめる直人。

苦しくて苦しくてどうしようもない。

今更どうすることもできないと分かっている現実を今だけは忘れていたい。




「絶対離さねぇよ」




聞こえた直人の声に振り返る。

私を見て微笑む直人はそのまま私を車の後部座席に連れていく。

椅子を倒してベッドにすると、天窓を開けてそこに私を押し倒した。

見上げたそこには愛する直人と満天の星。

こんなに綺麗な世界は見たことがない。




「直人さん、星は?」




顔を埋めようとした直人を止めるように言葉を唾ぐ。

直人の答えなんて分かっている。

だけど女って生き物は、分かっている言葉を聞きたいものなのかもしれない。




「星より綺麗なもんあるから、そっちに夢中…」

「ふふふふ…私も…――」




キュって指を絡める直人の温もりが私に重なる。

私の不安が伝わったのか、何度となく「愛してる」そう言ってくれる直人を心に身体に刻みつける。

一生忘れられないくらいに、強く…強く――――




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