抱きしめたい
「眠くない?平気?眠かったら寝ててもいいよ?」
山奥に入っていく高級車。
直人の運転は想像より上手。
つけられてる車もなさそうで、とりあえず早瀬の気配はここにはなかった。
ピアスがあるから大丈夫。
剛典も哲也も聞いてるから大丈夫。
「もったいないです、運転してる直人さん見ないなんて…」
「はは。女の子って好きだよね、運転してる男」
違うよ直人。
運転してる男じゃなくて、直人が運転してるのが見たいんだよ。
そう思ったけど、何だか恥ずかしくて黙ってることにした。
剛典に認めて貰ったからなんだろうか?直人への気持ちに歯止めがきかない…気がする。
私達、どこまでいけるんだろう?
このままずっと一緒にいられたらいいのに。
誰も私達のこと知らない世界にいけたらいいのに…
「ユヅキちゃん!」
「え?」
名前を呼ばれて振り返ったら直人のドアップ。
気づくと後頭部に手を回されていて、ハンドルを片手で握りながら直人の唇が甘く触れている。
パクッて唇を挟むようにハムる直人のキスは心地よくて胸の奥がキュンとする。
ギュッと伸びた直人の腕を掴んでこのキスを楽しむ。
角度を変えるのにほんのり目を開けたら、直人も同じように目を薄ら開いた所だったようで、クスリと微笑んだ。
「ごめん、キス我慢できなくて。人気がないのをいい事に…。やっぱユヅキちゃんとだと、気持ちの抑えがきかない。ガツガツしててごめんね?」
自分でも少し戸惑ってるような直人の表情に嬉しくなる。
そんな風に愛して貰えるのは嬉しい。
「ガツガツしてくれなきゃ嫌です」
そんな私の言葉にちょっと照れたように笑う。
八重歯がチラ見してて可愛い。
「ほんと可愛いよ、ユヅキ…」
「早く抱きしめて貰いたい…」
「俺も、早く抱きしめたい」
心なしかスピードがあがったように思えた。
天の川を見に来ている私達。
でも本当は天の川なんかよりも、直人の温もりが欲しい。
どんなに綺麗な星空よりも、直人のキスのが大事。