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殺気
「直人さん!」
「なんか、すげぇ新鮮!いつも俺がお店まで行くのにユヅキちゃんがここで待ってるなんて!」
「今日はお休みだったんで、この辺散策してました!」
言いながら直人の腕に絡みつくとコツっと頭をぶつけてくれた。
「飯食った?」
「まだ。直人さんの家で作りたい!ちゃんとエプロンも持ってきたんです!」
「マジで?…すげぇ嬉しい!」
「今日も泊まってもいい?」
立ち止まって耳元でそう聞くと、チラリと私を見て「もちろん!」嬉しそうに八重歯を見せた。
だからそのまま直人とスーパーで買い物をして彼のマンションにたどり着いた。
そこでふと視線を感じる。
直人は気づいてないみたいだけど、エントランスの柱の影に隠れるようにいた女。
私と直人を見ている。
既に背中に殺気を感じる私と、何も分かっていなさそうな直人。
あの女が、早瀬に間違いないって思った。
いつ私の存在に気づいた?
もしかして向こうも探偵事務所雇ってる?
だとしたらちょっと危険。
私の存在が直人にバレたら…
「ユヅキちゃん?」
「え?」
「話聞いてた?」
「え?ごめんなさい、なに?」
「はは、緊張してんの?」
「うん。だってずっと考えてたんだもん。直人さんと早く2人きりになりたいって」
言った言葉は本心だけどわざと早瀬に聞かせてやろうって思った。
だから郵便ポストがずらりと並んだそこに直人の腕を引いていくと、トンっと背中をつけて直人を見つめる。
半口開けてジッと熱く見つめると、ほんの少し困った顔。
でも私の頬を指で優しく撫でて「家まで我慢出来ないの?」なんて言いながらちゃんと近づいてくる。
だから「直人、好き」そう言って首に腕を回してそのまま軽く引き寄せると、強く抱きしめられて唇が重なった。
抱かれる前みたいに激しく舌を絡ませ合う私に直人の手が私の身体をなぞるように触れていて。
存分にキスをした後、その唇がゆっくりと首筋を通って鎖骨にチュッとくっついた時点で「直人…だーめ」そう言った。
少し呼吸を荒らげている私達。
「…色々我慢ができねぇ。ユヅキちゃん煽るんだもん。まぁ嬉しいけど…」
ポリポリって困った顔で頬をかく直人の下半身のそこに手を触れさせるとほんのり硬い。
「あ、硬い!直人さんのエッチ!」
「ちょっ!仕方ないでしょう!ユヅキがキス止めないから」
「だってしたかったんだもん。直人が大好きだから。……早く抱いて」
耳にチュッてキスしながら言うと。
「可愛すぎ。おじさんを夢中にさせて、困った子。……けど、俺も好き」
「愛してる?」
私の問いかけに「愛してるユヅキ」そう言ってまた、今度は直人から気持ちの篭ったキスが届いた―――――