分厚い壁
納得いかないって顔の臣だけど、啓司が作ったチャーハンがテーブルに運ばれてきてみんなが大人しく席につく。
これから作戦会議が始まる。
啓司があの女のことを調べて報告してくれることになっていて。
ご飯を食べながらの作戦会議が幕を開けた。
「そもそもデザイナーの片岡と、発注先の工場で作成していた中森あつ子は歳も一緒のせいかすぐに意気投合した。でもそれはどっちも恋愛感情なんてなくて単純にいい仕事仲間って関係だった。だけど早瀬は片岡に対して物凄い執着で。最初は軽い嫌がらせ。それがどんどんエスカレートしていって鬱に追い込んで自殺…。どんな手を使ったかは…」
そこまで言うと啓司はチラっと私を見て口を閉ざした。
言いたくないって顔してる。
そーいうの分かる。
「言って、啓司。私には聞く権利がある」
「…まぁそれは今夜教えてやる。片岡に近づく女はそうやって排除しているんだよ、早瀬は。例えそれが恋じゃなくても。だから…――次はユヅキが狙われる番だ。ユヅキに危害が加えられることだけは絶対に許さない、俺達が…」
どこか第三者的に聞こえた。
啓司が珍しくかっこよく見えるなんて。
肝心な時に守ってくれない男なんてダメ男だと思う。
どんなに口で好きだの、愛してるだの言った所で、ここ一番って時に傍で守ってくれないと意味がない。
ここにいる人はみんな信用できる。
例え自分を犠牲にしても、私だけは守りぬいてくれるんじゃないかって、思う。
「依頼主の中森以外にも結局のところ早瀬に対する恨みを持ってるやつらはクソいっぱいいたわ。早瀬は施設で育ってるから両親はいない。施設から出て最初に恋をしたのが片岡。単純に優しくされて嬉しかったのがきっかけみたいだぞ。親からちゃんとした愛情をうけてない早瀬の偏った愛情は…―――俺達も分かるけど…」
啓司の言葉に剛典がチラリと哲也を見た。
でも哲也は剛典を見返すことはなくて。
静かにチャーハンを食べている。
「この件、ユヅキが片岡を落とすだけじゃ終われねぇ…。どうにか早瀬を始末しねぇと…」
ドキっとする。
そこにほんの少し垣間見えた啓司と哲也の動揺。
「…始末っすか?」
あえてなのかそこに突っ込んだ剛典はやっぱりツワモノなんじゃないかって。
「それはアキラ次第」
でも哲也にピシャリとそう言われて、剛典との間に大きな分厚い壁ができたようにも思えた。
ここから先は入ってくるな!って一線が哲也によってひかれた…気がする。