眠れない


「俺ちょっと寝るけど、ユヅキは?」

「え?」

「ほとんど寝てないでしょ?」

「…うん」

「んじゃ一緒に寝る?」

「………」



寝ないで抱かれてたこと、知ってるんだって。

分かってたけど、やっぱりそうなんだって。



「あからさま。俺と一緒に寝るのイヤ?」



苦笑いで哲也が私を見ていて。

そんなつもりじゃなくて。

一度だって哲也を嫌だと思ったことなんてない。



「そんなことない」



わだとらしく大袈裟に否定する私を見て、切なそうに微笑んだ。

スッと私の前に手を差し出す哲也。

その手をギュっと握ると小さく息を吐き出した。

無言で哲也の部屋に行くと「先にシャワーする?」そう聞かれて。



「うん」



小さく頷いてシャワーを浴びると交替で哲也もシャワーを浴びに行った。

ベッドの上で膝を抱えて待っていた。

別に先に寝てもいいのかもしれないけど、何でか寝付けなくて。

身体はすごく疲れていて重たいのに。

眠気だってきてるのに、哲也のベッドは一人じゃ大きすぎて眠れない。



「起きてたの?」



だから肩にかけたタオルで髪を片手で拭きながら寝室に入ってきた哲也が目を大きく見開く。



「うん。眠れなくて…」

「どうした?」



私の心配ばっか。

哲也はいつだって私のこと優先してくれる。



「何も聞かないんだね?」



私の言葉に困ったように眉毛を下げる哲也。

アヒル口をへの字口に変えて私を見ている。



「聞かれたい?」

「え?」

「好きになっちゃったの?片岡直人のこと…」

「………」

「答えられないだろ?俺も、何て聞けばいいか分かんない」



フワリとベッドの上で、抱きしめられる。



「どんどん変わっていくユヅキを見てるのってどんな気持ちだか分かる?」

「てっちゃん…」

「嘘、知らなくていい!ごめん…」



何で哲也が謝るの?



「てっちゃん…私のこと好き?」



私の質問に、哲也の瞳が大きく揺れた―――
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