幸せにして


どこがいいとか、こーいうのが好きとか、本気で愛し合う恋人達には必要ないことなのかもしれない。

身体を触れ合わせれば、甘い声を出せば、それは全部が心地よいものへと変わるみたいで。

一晩で直人は私の気持ち良い所を全部見つけた。

そんなところまで?って所まで直人に触れられると快感で熱くなる。

妖艶に艶やかに腰を振り続ける直人の顔から汗が垂れて。

高級なベッドなんだろうか、ギシギシなんてそんな音はしない。

だから聞こえるのは直人と私の溢れる声。

肌がパンパン触れ合う音。

接合部分から漏れるいやらしい水音。

まるで初めて耳にするかのように鮮明に私の耳に残る。



「ハアッ……ハァッ……」



身体が壊れるんじゃないかってくらい、直人が強く腰を振り付けて私の意識も遠のきそうで。

薄目で私を見下ろす直人はやっぱりかっこいい。

特段顔がタイプなわけでもないのに、すごくかっこよくて、惚れ惚れする。

今キスしたい……

私がそう思った瞬間、直人の唇が降りてきて私の唇に触れた。

気持ちが通じてることが嬉しくて、私から舌を絡ませたら、キスしながらクスッて笑われて。



「可愛い…」



もっと言って。

もっとキスして。

もっともっと抱いて。

直人の声、もっとずっと聞かせて。



「直人さんも素敵。かっこいい」

「マジ?」

「うん。ずっとそう思ってる」

「嬉しい……あ、あ、俺やばいかも…」

「うん。イク?」

「イキそ」

「私も、」



肩に顔を寄せて直人が更に律動を早めた。

そんな直人の背中に腕を回して抱きしめる。

胸が触れ合って先端が軽く擦られてキュンってする。


目の前が真っ白になって、子宮の中が燃えるように熱くなると、むず痒くビクビクっと震える。

それを待っていたみたいに直人が「クッ…」小さく鳴いて腰の動きを止めると、お尻がビクビクっと痙攣した。



「イッた?」

「……ん。やばいくらい気持ちぃ」

「私も…」



コテって隣に転がった直人にすぐにくっつく。

ほんのり空いた口にチュッって触れ合うだけのキス。

胸に顔を埋めると、ドッドッドッド…心臓が早鐘を鳴らしている。



「直人大好き」



ただ伝えたくて。

答えなんて求めてないけど、「俺も好きだよ」答えをくれる。

見つめ合ってもう一度唇を寄せると、さっきよりもキスが濃厚になった。

舌を絡ませるだけで、胸の奥がキュンとして子宮がしまる。

そのままずっと触れてて欲しいの。

離さないで欲しいの。



「ユヅキちゃん。一緒に幸せになろう!ちゃんと将来のこと考えるから。今すぐってわけじゃないけど、ちゃんとユヅキちゃんを幸せにできるように俺頑張るから。ずっと傍にいてね?」



首を傾げて覗き込む直人は、さっきまでの妖艶からほんのり少年の顔に変わっていて。

この直人もすごく好き。

大人なのに可愛くて愛おしい。



「はい。直人さんと幸せになりたい」



この時、ほんの少しでも未来を夢見た私は、やっぱり叶わぬ恋があるんだと、身を持って知ることになるんだ。

気づかない時が、一番幸せなんだって。



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