真実の後
「怖くない…」
私の言葉をちょっとだけ驚いた顔で聞く直人。
怖いっていうと思った…って顔。
直人は目を逸らすと下を向いて…一度大きく息を吐き出した。
「直人さん?」
呼びかける私に、次の瞬間真っ直ぐな視線で私を見つめる直人。
目が合ってドキっとした。
強いその目を逸らすことなく私に向けていて…
「ありがとう、俺のこと信じてくれて…。すげぇ嬉しいよ。でももう一つだけ言うね…」
開いた足の真ん中で指を絡めている直人の隣に移動する。
私に触れることなく見つめながらその口を開いた。
「俺がちゃんと気付いてあげられなかったせいもあると思う。仕事で俺と関わった人がいて、その人と俺の中を疑った彼女はその人を鬱に追い込んで、最後は自殺させた…。でも俺はやっぱり自分の気持ちに嘘ついてまで彼女を受けとめることはできなくて。この先、ユヅキちゃんの存在がバレたら間違いなくユヅキちゃんを狙ってくると思う。それでも俺は、ユヅキちゃんを離したくない。ずっと一緒にいてほしいと思ってる。どんなことがあっても、俺が必ず守るから…信じてほしい…」
そんなにまで直人を好きになった人がいるってことは、ある意味すごいことなんじゃないだろうか。
何としても。
何が何でも、直人を手に入れたいって。
人にそこまで想われる人は、きっと素敵な人。
私も少しだけ分かってきた。
目の前にいる直人を見て心が熱くなる。
そっと直人の手に自分の手を重ねた。
「はい。信じます、直人さんのこと。だから何があっても離さないで…私のこと。私も守るから直人さんのこと。全部隠さず話してほしいです。全部全部知りたい、直人さんの全部。…私のこと、ずっと好きでいて…」
「ユヅキちゃん…」
「直人…」
ギュっと握った手に力を込めると同時に直人の首に腕を回して抱きついた。
あの女の恋人じゃなかった。
直人は嘘ついていない。
でも離さない。……離せない。
何もかも全部哲也に責任押し付けてでも私は、直人を愛したい。
こんなにも心が震えるくらい気持ちが高ぶったのは、直人だけ。
欲しいと強く思ったのは直人だけ。
「ごめん俺…余裕ない」
「私も…止められない…」
抱きしめていた腕を離して迷うことなく唇を重ねる―――
想いをぶつけるような激しいキスに頭が真っ白になっていく。