特別なポジション


まんざらでもないの、私…。




「啓司はさ…」

「え?」

「好きな人いないの?」

「…は?」



何言ってんの?って目で私を見るけど。

そんな変なこと言った?



「いないの?好きな人…」



真面目な私を見て啓司は目を逸らして深く溜息をついた。

私の紅茶を一口飲むと「あまっ」って変な声をあげる。



「抱いて欲しいの?」



何故かよく分からない素っ頓狂なことを言われた。

カケラもそんなこと思ってないけど。

むしろ啓司にまでそんな風にされたら、逃げ場がなくなる。



「あのね…」



すっごい真剣な顔で啓司の腕をギュッと掴むと啓司が少しだけ距離を取る。

そんな啓司を真っ直ぐに見つめて私は思いを口にしたんだ。



「啓司が私の癒しなの!てっちゃんはともかくとして、臣も剛典の私のこと抱こうとするんだよ!啓司は何もしないって信じてる!私達そーいう関係じゃないよね!!ね!ねっ!?」

「……無理やりだなぁ、お前」

「だってやだもん!そーいうことしたくない時だってあるもん!その時は啓司と寝たい!何もしないでただ一緒に寝るだけがいい」

「んな顔で言われたらイエス以外言えるかよ!まぁいいけど、それはそれでまた特別なポジションだろーし!ただ抱きしめて眠るのも悪くねぇ」



ニヤッて口角をあげて啓司が笑った。

だから今夜の眠りは安心だってホッとしたんだ。

でもそれがそう……―――――「いわゆる、片岡以外に触られたくないってこと?」…分かっているのか、適当なのか、啓司の言葉に唾をゴクッと飲み込んだ。



「けーじ…?」

「哲也、どんなに冷静に見せてても俺には分かる、焦りが見える。ユヅキさ、哲也のことどー思ってんの?」



なに、いきなり。

啓司ってこんな話できる人だった?

いつだってチャラくて適当で。

何で今更真面目ぶってんの?

超似合ってないよ。

哲也のことどー思ってる?なんて、そんな質問自体が間違ってる。

私は別に哲也のことなんて。



「好きじゃないなんて言えなくねぇ?」

「…え?」

「片岡は珍しいだけだろ。外の男に触れてそれでユヅキの気持ちもちょっと好きかも?って思ってるだけ」
「好きじゃないわよっ!直人のことなんて別に何とも思ってないよっ!!」



大声出したせいで呼吸が乱れる。

分かったような口聞く啓司に腹が立った。

ギロっと睨みつけるけど何てことないって顔で余裕の笑みを見せる啓司。



「だよな、その通りだよ!それでいいんだよ。好きなわけねぇって。見失うなよ、哲也の愛を!それが分かれば今夜俺を選んだ意味もあったってこと。寝ようぜ!」



まだ飲みかけの紅茶を私の手から奪うと、啓司はそのまま手を繋いで寝室へと移動する。

心臓がバクバクいっているのは何故だろうか。

哲也の愛……

啓司の言ってることが半分も理解出来ない。



哲也はやっぱり私を愛しているんだろうか?


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