中間報告


マンションのエントランスに入るとそこにいた哲也。

私を見て優しく微笑んだ。



「お帰り」



ギュッと抱きしめてくれるこの温もりが一番安心できる。



「ただいま」

「アキラが呼んでる」



中間報告かな。

哲也に手を引かれてオフィスに戻った。

ハグの余韻に浸る暇もなく…




「アキラ」

「おう」



座れって顎でクイっとソファーに誘導されて、哲也と一緒にそこに座った。

大股開いて前に座ったアキラは開いた足の間で指を組んで俯いた後、スッと顔をあげた。

その目が真剣すぎて急に緊張してくる。

私、おろされる?

ダメだって?ハニートラップ失格?



「ユヅキ…」



アキラに呼ばれてゴキュっと唾を飲み込んだ。



「はい…」

「じつはユヅキがやってる片岡直人だけど、もしかしたら依頼主の妹を追いこんだ女と付き合ってるわけじゃないかもしれないんだ」



アキラの言葉にハッとした。

さっきの電話、もしもアキラの話が本当なら直人の言うことも本当で、私に嘘ついたんじゃないんだって。



「直人もさっきそう言ってた。たぶんかかってきた電話の相手はその女だと思うけど、彼女じゃないって私に言い張ったから」

「もうそこまでいったの、ユヅキ…」



ちょっとだけ複雑そうな表情で伸びた鬚を触っているアキラはジッと私を見て探るように聞いた。



「え、うん。さっきキスした。私のこと守りたいって…」



アキラの視線は隣の哲也にいっていて。



「え、アキラも聞いてるんでしょ、会話…」



そう言ったものの、アキラの耳にピアスはついていなくて。



「聞いてねぇよ俺は。悪りぃけど抱えてんのお前の案件だけじゃないし。ユヅキのことは全部哲也に任せてある」

「そうなんだ」

「なに?俺じゃ不満?」



地響きしそうなくらい低い声で哲也が言うから「滅相もないです」って首を振って否定。

やっぱり私、今夜は哲也に苛められる気がする。



「まぁとりあえずそういうわけだから、詳しく分かるまではユヅキは片岡に会わないようにしろ」

「え…」

「あ?」



アキラに睨まれて「分かりました」丁寧に頭を下げた。



「てっちゃんおやすみなさい…」



小さく言って立ち上がった私はそそくさと逃げるようにシェアハウスに戻った。

直人の為に作ったサンドイッチのあまりを自分で食べようって紅茶を淹れた所で後ろからギュっと抱きしめられた。


…――誰っ!?

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