意地悪な質問


「おはよー」



臣と一緒にシェアハウスのリビングに行くと、相変わらず珈琲のいい香りが漂っている。

珈琲豆を挽いてる哲也が私と臣を見て「おはよう」小さく言った。

その目がなんていうか…「哲也さん!」…私の視線を遮るように臣が哲也を見ている。


「なに?」


何となく冷たさを含んだ哲也の声に私はそっとソファーに座った。


「今日から毎日ユヅキと寝させてくださいよ?」


臣の言葉に顔色一つ変えないでただジッと見ていて…

視線は臣から私へと移動する。

哲也の視線は私を責めているようにも思えて仕方がない。

どうしてそんな目で見るの?

そんな裏切られた…みたいな目で見ないでよ。

何も言えずに顔を伏せた私に「ユヅキ…」呼ばれて顔をあげると、ジッと哲也がこっちを見ていた。


「…なに?」

「今夜誰と寝たい?」


そんな意地悪な質問をされて。

誰でもいい…って言えば臣になるの?

それとも哲也?

でも私、臣に今夜も「愛してる」って言われ続けるのは辛い。


「広臣、お前はダメだ。ユヅキの気持ち考えて寝たんだろうな?」


声色だけじゃなく、その視線も鋭く臣を睨む哲也。


「なに、喧嘩?」


そんな二人の間をすり抜けて啓司が私の隣に座る。

大きな身体で大股開いてドカっとソファーに座るから、ほんの少しグラつく。



「当たり前じゃん!だから毎日ユヅキと寝たいんだって…」

「言ってる意味がわかんねぇけど…」



哲也の言葉に臣がイラっとしたのが分かった。

思わず一歩踏み出したその時「はいはい、二人共落ち着いて」止めたのは剛典だった。



「ユヅキちゃん今夜は俺と寝る?」



それから明るくそう言われて。

哲也は何されるか分からないし、臣に愛されるのはしんどい。



「うん」…そう言おうとしたら「今夜は俺!」啓司が私の肩を抱き寄せた。

思わず真ん丸な目で啓司を見つめた。



「初めてだな、俺と寝るの!」

「え、うん…え?啓司と…?」

「なんだよ、嫌なのかよ?」



そう言われると「別に、嫌じゃないけど…」答える私の頬にチュっと小さなキスをされる。


「んじゃ決まりだな!いいよな、哲也?」

「…ああ」


何だか不思議な気持ちだった。


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