アットホーム


直人にあのマンションまで送って貰った。

ドアを開けてそのままシャワーを浴びる。

直人に会った日は、どうにも身体が重くて人に会いたくなくなる。


「あ…」


ピアスしたままシャワー浴びてた。

すぐに外してベッドにゴロンっと身体を預けて目を閉じるとガチャっと誰かが鍵を開けて入ってきた。


「熱は?」


ギシっとベッドに座って私の髪を撫でる。


「分かんない」

「髪乾かさないと悪化すんぞ」

「面倒…」

「全くユヅキは女の癖に…」


ふわりと私を抱き起こしてドライヤーで髪を乾かしてくれる。


「てっちゃん…」

「ん〜?」

「呼んだだけ」

「なんだそれ」


クスって笑って私を後ろから抱きしめた。

コツって背中に頭をつける哲也からは珈琲のいい香りがしている。


「てっちゃん珈琲飲みたい」

「先に薬飲めって」

「まずいの嫌い…」

「飲ませてやるから」

「じゃあ飲む」

「いい子」


よしよしって頭を撫でてからまた私の髪を乾かしだす。

風邪のせいでダルイ身体を目一杯哲也に押し付けるけど、別になんてことないって感じに方足立てたそこで支えてくれている。

ボーってドライヤーの音に紛れて鼻歌を口ずさんでいる哲也はどうやら機嫌がいいらしい。


「できた、おいで」


部屋着の私に啓司に貰った白いストールを巻くと、そのまま哲也はあのシェアハウスへと連れて行った。


「あーユヅキ不足で死にそうだった〜」


リビングに入るなりソファーに座っていた臣が私を抱きしめる。


「今朝会ったじゃん臣」

「あんなの会ったうちに入らねぇよ」

「甘えん坊だなぁ臣は」


ギュって抱きしめ返すとゴクっと唾を飲み込んだ。


「臣さんキャラ違うし」


剛典が私の前に水と薬を持ってきてくれて。

何気にホストだったせいか気が利く男と化している。


「広臣、どいて」

「え?」

「ユヅキに薬飲ませる」


哲也に半強制的に退かされた臣に変わって私の横に座る哲也。

薬を自分の口に含むと、水も含んだまま顔を私に寄せる。

後頭部に回された手が私の首にかかって哲也の舌ごと水と薬が私の口内に入り込んだ。

チュってリップ音と共に離れていく哲也の舌。

ゴクっと水を飲み込むと、喉を薬が通っていく違和感を覚えた。


「哲也さん、ユヅキと寝る?」

「当然!」

「はーい」


哲也の目が笑っていないことに、臣が素直に負けを認めた感じで。

さっきまであった疲れがほんの少しとれた気がした。

やっぱりアットホームなここが私の居場所なんだと思えた。

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