会える保証


啓司の特製粥と、臣の下心丸見えな看病の結果、私の熱は翌朝見事にさがった。

シャワーを浴びていると至って普通にノックもせずにバタンっとドアが開いて。


「今日は休んでいいってユヅキ!デートしようよユヅキ〜!」


散々昨日チューを迫った臣が私の裸体を見て「わお!」分かりきっているはずの声を出した。


「すっげぇい眺め!」


そう言うか、臣は自分の服も脱ぎだして…


「抱かせてよユヅキ」


耳元で甘く囁く。

勿論こんな朝っぱらから抱かれたくもなく、「やだ!」…うわ、すっごい声。

熱は下がっても声はまだ酷いな。

今日休むべき?

そう思うけど、もしお店に直人がきたら…そう思うと休んじゃいけない気がして。


「…声戻んないね、ごめん…」


チュって頬にキスをすると臣はすんなり脱いだ服を着た。





「行ってきます」


ガラガラ声をのど飴を舐めて治そうとしたけど無理で、仕方なくそのまま夜お店に顔を出した。

昨日の今日だし、今日来るなんて保証はないけれど、何となく今日も来る気がした。


「後で俺も行くから」


出際にポンっと哲也に頭を撫でられる。

私はコクっと小さく頷いてハウスを出たんだった。



20時過ぎ…。

昨日はもう来てた時間だけど今日はまだいなくて。

仕事忙しいんだろうな〜って。

自分の事務所立ち上げてやってるみたいだから自由はきくだろうけど、逆に忙しい時の追い込みは半端ないのかなって…。

無意識でサンドイッチを沢山作っていたのか「ユヅキちゃん!?」急に名前を呼ばれて顔を上げると、そこにはこっちを見てニコニコしている直人がいた。


「あ、直人さん!」


出した声は思う以上にオカマ声で…。


「どうしたの、その声…風邪引いちゃった?」


心配そうに見ている。

スーツをお洒落に着こなしている直人からは煙草と香水の匂いがして…


「すみません聞き取りずらいですよね…」

「いや俺は構わないけど、大丈夫?」

「はい、熱は下がったんで。声だけ戻らなくて…」

「熱出てたの?」

「あ、はい…」

「んじゃ今日は早く帰って寝てよ、心配…」


嘘…じゃないよね?

本気で心配してるんだよね?


「直人さんが来ると思ってサンドイッチいっぱい作って待ってました!」


そう言ってカウンター越しにサンドイッチを見せるとほんの一瞬止まった直人。

次の瞬間小さく息を吐き出して自嘲的に眉毛を下げて笑ったんだ。


「あ、ごめんなさい私…勝手に迷惑でしたよね…」

「いや…」


でも直人はそう言うだけで、その後何も言うことはなかった。


- 26 -
prev next
▲Novel_top