特製粥


「熱上がりそう…」


朦朧とする意識の中聞こえたのは臣の声で。

結局アキラに抱きかかえられたまま私はシェアハウスに連れてこられた。

臣が心配そうに私を看病してくれる。


「臣…」

「ん〜?」


ありがとう…そう言いたいけど何だか喉が痛くて声にならない。

そんな私を分かっているのか臣はベッドに腰掛けたままクシャっと私の髪を撫でた。


「俺にうつせば治るよ?」


ニーってえくぼを出して笑うと、チュっと小さくオデコにキスを落とした。


「ユヅキ、入んぞ!」


ノックもせずにドカっとドアを開けた啓司。

その手にはお盆に乗せたお粥があって。


「俺特製粥。これ食えばすぐ治るぞ!」


そう言って乱暴にベッドサイドにあるテーブルに置いた。


「臣、どけ」

「なんで?」

「俺が食わせる」

「え〜俺が食わせたいっすけど…」

「ダメダメ、お前顔がいやらしくなってるから。一応病人だからねユヅキ」

「…啓司さんに信用なんてないっすから!」


そう言うと臣は私の頬を撫でて「また後でね」クルリと背を向けて出て行った。

私の首の下に手を入れて、抱き起こしてくれる啓司。

枕を後ろに敷いてそこにグッタリと寄りかかった。

身体が熱い。


「とりあえず食えよな」


啓司の言葉にコクっと頷く。


「食欲はあるのか?」


またコクっと頷く。

私を見てニカっと笑うと、啓司は首にかけていた白いストールを脱いで私の肩にかけてくれた。


「お前意外と泣き虫なんだな…」


え?


「まぁ弱ってるし、仕方ねぇか」


絶対にないはずなのに涙の後を拭うみたいに私の頬をそっと抓った。

啓司っていつも調子いいことばっか言ってるけど、たまに真面目モードな時があって。

本当にたまにこうして私を癒してくれる。


「けーじ…」

「すげぇ声だな…いいからお前の言いたいことは分かってる」


絶対分かってない…。

そう思ったけど口にするのも面倒で私は苦笑いを零した。

目の前でフーフーしてから私にお粥を差し出す啓司。

一人で食べれるけど、この優しさに触れていたい…そんなことを思ったなんて。

パクっと一口食べると口いっぱいに昆布の味が広がって…。


「美味しい!」そう言う代わりに親指を立てて口端を緩めた。


「だろ!これ食えば明日には熱も下がるよ」


啓司の言葉にコクってまた小さく頷いたんだ。


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