夢と胃袋


「聞いてもいいですか?」

「うん?」

「直人さんは何のお仕事されてるんですか?」

「俺ね、デザイナーなのこう見えても…。ファッションに興味あってね…それで最初はブランドに努めてたんだけど、やっぱ自分のブランド立ち上げたくって…。色んなコネでバックアップして貰って…”HONEST BOY”ってブランド立ち上げたんだよね〜」


誇らしげな横顔に自然と笑みが浮かぶ。

夢を持つことはきっととても素敵なことで、それに向かって努力している人はやっぱり少なからず輝いて見えるもんなんじゃないだろうか…。

直人は自分の夢を堂々と語っていて、そこに迷いなんてものは微塵も見えない。

私もいつか、夢が持てるだろうか…。


「すごい…」

「そんなことないって!ユヅキちゃんも夢あるっしょ?」


クイっと首を傾げて私を覗きこむけど…


「夢…ですか?」

「うん、夢!ほら、サンドイッチ作るのすげぇうまいし、いつかは自分のお店出したい…とか?」

「はい…。でもまだまだ全然未熟なんで、今は勉強することの方が多いですし、楽しいです!」


直人が言ってくれた夢に便乗したら「応援するよ!」なんて言ってくれて。

本当に直人のバックアップがあったら実現できそうな気にすらなってくる。


「直人さんが応援してくれたら…きっと叶うって思えます…」

「だって俺ファンだもん、ユヅキちゃんの!あんなうまいサンドイッチ食ったの初めてだったからマジで」


ニカって八重歯を見せて笑う直人に私も微笑み返した。


「私、掴んでますか?」

「え?掴む?」

「はい!直人さんの胃袋!オトコは胃袋で掴むもんだって…よく言うじゃないですか!!」


私の言葉にブって噴き出した直人はポンポンってまるで子供をあやすみたいに私の髪を撫でると続けた―――


「掴まれてるかもな…」


ドキっと胸が高鳴ったなんて。


恋の始まりがもしもあるとしたら…こんな瞬間なのかもしれない―――

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