我儘な独占欲

柱の影でキスなんて、今までだったら考えられなくて。

相手が隆二だってだけで、なんでも許されるんじゃないかと思えた。


「到着ー!」


隆二のマンションについて鍵を閉めるとふわりと後ろから抱きしめられた。


「やっとユヅキを独占できる」

「ふふふ、やっと隆二を独占できる」


くるりと身体を反転させて正面から隆二に抱きつく私に困った様に眉毛を下げた。


「なんでそんなに可愛いのかなぁ、この子は…」


私の頬を指で撫でている隆二の胸元にムギュって顔を埋める。

隆二の香水がほんのり香って心地よい。

このまま離れたくない。

私だって思ってる…


「隆二がかっこいいからだよ、きっと…」

「ほんと?ユヅキに言われるとなんかすげぇ嬉しい…」

「えー言われ慣れてない?現場での隆二の評判いい…っていうか、悪く言う人いないよ?」

「だって現場じゃ俺、いい子してるから!我儘な俺を知ってるのはユヅキだけだよ!」


隆二の言葉にキョトンとする。

いったいどこがどう我儘なんだろうか?って。

見上げる私を見て髪の毛を指でそっと救ってそこに小さく口づける隆二。

ソファーに座る隆二の膝の上に乗って隆二に寄り掛かった。


「ねぇ」

「んー?」

「どこが我儘なの?私隆二の我儘なんて一度も見たことないよ?」


真剣にそう言ったけど、隆二はクスリと笑って私をぎゅうって抱きしめる。


「ユヅキのこと独占したいって思ってるし、ユヅキのこと俺以外のヤツに触らせたくないって思ってる…ね、我儘でしょ?」


ニコッて笑う隆二があまりにも可愛い顔で可愛いことを言うから本当に今日はダメだ。

どうしようもなく、隆二が愛おしい。

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