足りない
手を繋いだまま薬局に入っておもむろにゴムが売ってる棚に直行する私達。
スッと手を伸ばして隆二が箱を手にすると、周りにいた学生さんがジロジロみていて。
買いたいのかな…なんて思った。
大人でも買うの躊躇するのにちょっと手にしずらいよねぇ。
私も自分で買ったことはないけど…
「買い慣れしてる?」
「えっ!?」
ゲホゲホって隆二がむせた。
何言ってんの?って顔で私を見下ろす隆二にニコっと微笑む。
「オミに聞いてみようかな、隆二の過去…。学生のころの隆二ってどんなだったか?」
「なんで急に?」
「だって買い慣れしてるように見える」
本気で怒ってるんじゃなくて、ちょっとだけプゥ〜って頬を膨らませる私に、隆二が困ったようにその頬を指で突いた。
「買い慣れしてるわけないでしょう、臣じゃあるまいし。俺は一途で有名だったんだから」
「一途にずっと一人の子とえっちしてたってこと?」
それはそれで嫌だなぁ〜。
何だか自分で振ったくせに、ちょっとだけ凹んだ。
隆二がかっこよくてモテるのは百も承知なのに、私ってこんなにも嫉妬深い女だったんだって。
過去があって今の隆二がいるんだってことも全部含めて隆二を愛しているはずなのに、過去の女はやっぱり消せないものだと。
「ユヅキ?」
「あ、ごめんね。ちょっと余計なこと考えちゃった。隆二の過去…」
「俺マジでユヅキだけだよ、こんなに愛してるの。確かに付き合った人はいたけど、こんなに結婚したいって本気で思って考えたのは後にも先にもユヅキだけ。それは信じてくれる?」
隆二の優しい目が私を真っ直ぐに見つめている。
信じない意味なんてない。
「うん」
「でも不安とか不満とかあるなら、隠さないで全部言って欲しい。そういうのって我慢することじゃないって思うし、ユヅキがそんなことで悩んで苦しむ姿は見たくないから」
「うん」
「俺言葉足りない?ユヅキが欲しい言葉、ちゃんとあげられてないかな?」
首を傾げる隆二に「そんなことないよ」十分すぎるほど隆二は私を愛してくれてるもの。
「ほんと?」
「うん。私が欲張りなの。隆二のことだと理性がなくなっちゃうっていうか…でも大丈夫。今の隆二が大好きだから、隆二はただ私を好きでいてくれればそれでいい」
ニコっと微笑むと、隆二もニッコリ微笑み返してくれた。
でも…。
ちょっと屈んで私の耳元に唇を寄せるから「ん?」って言うと。
「俺は足りない。もっとユヅキの愛が欲しい」
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