彼の服

「あ、煙草切れそう…」


そうボヤいて時計を見る隆二。

早退したお陰で、まだ夜は終わらない。

一通り愛し合ったあと、二人でお風呂に入って髪の毛を乾かしてこれから何する?って所で隆二が煙草を吸おうとした所だった。


「買いに行く?」


私が聞くと立ち上がってポンっと私の頭に手をつく。


「いいよ、ユヅキはここにいて。俺がすぐ行ってくるから」

「え、だめだよ。だって買い物してる隆二も見たいもん!」

「え?普通だよ?」

「うん、でも見たい。それにほら…」


ベッド脇に置いてあるミニコンポの上に無造作に置かれた0.02ミリの箱。

それを指差してニコっと微笑む私。


「これも少ない…」


さっきいっぱい使ったから…なーんて。

体力そんなにある方でもないけど、隆二相手だと終わってもすぐにまたしたくなっちゃうんだもの。


「あーそれは危険!勿論今夜も使う予定だよね?」

「それは隆二次第…」

「とかいって、俺ユヅキに誘惑されてばっかじゃない?」

「だって好きなんだもの。隆二も隆二に触られることも…」


ヘヘって笑うと隆二がふう〜って息を吐き出した。

それから「じゃあ服、選んで?」そう言って私を引っ張るとベッドの足側についていたクローゼットの中を開けた。


「わ、すっごい…なにこの量!こんなにあるの、男の人って?私よりも多いんじゃないかな…」


目の前には小さなショップのような沢山の洋服があって。


「ほら、さっき会った臣。臣がアパレルだからいつも俺に合う奴取っといてくれて」

「あ、なるほど!あ、でもこのシャツとか可愛い…」

「いる?あげるよ」


スッて手にとって私に合わせてくれる。

ちょっと長めの白いシャツ。


「あ、可愛い。何着てても可愛いけど、今日は俺の着てよ?」

「じゃあ着るだけ。貰うのは申し訳ない…これ高そうだもの」

「え、あげるって。だって俺達ほら結婚するんだし、金は全部ユヅキに任せるから。俺の給料も知ってるだろうしね」


ドキっとした。

確かに結婚するのとそういうこともあるのかって。

とりあえず着てみようって着たら、ちょっと短めのワンピースみたいで。

でも上は大きいからダボっとしているのが何か恥ずかしい。


「うわ、すっげぇヤバイ!ちょっと待って」


そう言うと隆二はスマホを持ってきてカシャっと写メを撮った。


「待ち受けにしよ」


嬉しそうな隆二に私も笑顔になった。

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